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2013-08-10(Sat)

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日/ヴィシュヌの神と10のアヴァターラ

2012年 アメリカ
ライフ・オブ・パイこの作品は一見、現実的でありながらも「ファンタジー」です。大海原のボートの中に「トラと少年」。何故、こんな状況に??映画予告だけで興味をそそられました。原題は世界的なベストセラー小説「パイの物語」。過酷な状況を逞しく生きていく少年の物語。漂流しどこまでも続く海と空、ボートにトラ。たったこれだけのものを何パターンもの美しい映像で見せてくれます。物語はこの少年が大人になり、ある小説家が彼の体験を聞いているところから始まります。

[あらすじ]
主人公の名前は「パイ」彼の一家はインドで動物園を経営していた。彼は出生の話から名前の由来、家族の話と宗教の話。ヒンズーにキリスト、カトリック。あらゆる神を崇め、どんなことにも感謝する心の純粋な少年だった。ある日の事、パイは兄を連れてリチャード・パーカーと名付けられたトラの檻の前に行き、止める兄を無視し肉を手渡して与えようとして父親にひどく叱られます。子供心にパイは言います。「動物にも魂はあるよ あの目を見ればわかる」と。トラと心が通じあうと信じていた彼に父親は、生きた動物をトラに与えた。ショックを受けたパイはそれから二度とトラに接触しなくなる。同時に世界は輝きを失ってしまったようだった。

成長し16歳になったパイは恋をします。しかし一家はカナダに移住をすることになる。動物達はカナダで売却するため一緒に船に乗り込む。船は日本の貨物船だ。船の中で彼はふと思った。彼女との最後のデートの一部始終を覚えているのに、「さよなら」を言っていないと。夜、船は嵐で沈没。彼は家族を脱出させようとしたが叶わず一人生き残った。翌日、シマウマ、ハイエナ、トラ、それにバナナに乗ってやってきたオランウータンがボートに乗っていた。


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やがてボートにはトラだけになります。パイは虎に食べられないようにするために避難用荷物と装備品でいかだを作り非常食で飢えをしのぎます。そしていろんな知恵を絞ります。トラを調教しようとしたり、自分が食べられる事を避けるために魚を取って与えたりします。

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彼はトラから開放されるチャンスがありました。しかし彼のとった行動とは・・?

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トラと少年は、様々な困難と飢えに耐えながら、素晴らしい光景を目撃したり、幸運な出来事にも遭遇します。

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彼はなにかあるごとにトラに話しかけます。やがて、パイはトラに自分が生かされている事に気づくのでした。

パイもトラも衰弱しきっていたある日、目覚めるとある島にたどり着いていました。リチャードパーカーの姿は既になく先に島に降り立っていた。まるで楽園のような島だと思っていたが一晩でここにいてはいけないと気づく事に。島の動物達もトラもそれを知っていた。パイは翌日、旅立ちの準備をしてリチャードパーカーを呼ぶと彼は姿を現しボートに飛び乗った。リチャードパーカーが猫のように見える一瞬です。
トラはパイを獲物にするチャンスがいくらでもありました。出発するボートには、もう「ロープでつないだいかだ」はありません。

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やがて奇跡的にパイはメキシコの海岸にたどり着きます。トラを乗せたボートを引いてやっと岸にたどり着くと、彼は倒れこみトラは降り立ち、振り返らずジャングルに消えていった。パイはさよならの挨拶もしないでいってしまったと激しく泣いた。大人のパイは小説家にこう言います。「父の言葉は正しかった。トラとは友達になれなかった。苦難を共にしたのに振り返りもしなかった・・しかし彼が私を見るときにその目に宿った感情は本物だった。一番悲しいのは別れを言えずに終わることだ。」と。
しかし、ボートから降りてきたみすぼらしくやせ細ったトラの体は、人間と肉食動物の関係を超えたということを見ている側に伝えている。

病院に運ばれたパイは、日本の船の保険調査員から話を聞かれたが、事実を話しても非現実的な話だと信じてもらえず、本当は何があったのか現実的な話をしてくださいと言われる。すると今度はパイはボートにいた動物達の出来事を、船の中ですごした船員と家族に見立てて話をする。調査員はこの話も気に入ってはいなかったが仕事を終えて帰国した。パイは小説家に問いかける。この2つのストーリーを
「君ならどちらがいいか」と。小説家はトラの物語と答え、彼は少年とトラの漂流生活が真実であるとこの物語を小説にすることを決めた。
彼の手にある保険調査員の報告書コピーの最後のページには「トラと漂流して生還した・・・」と記されていた。

↓作品の解釈・作品を観ていない方は見ない事をお勧めします。(観た方は選択で見られます)
解釈がとても難しかったです。過酷な状況の中で生き残ることをテーマに、動物達の物語からそれを母親や貨物船に同乗していた登場人物に例えた話をし、「どちらがいいか」と問う。よく考えると、これは実はどちらも同じです。当初、生き残ってボートに乗っていたのが、人か動物かだけの違いで、物語もその結果にも変わりはなく、2つ目の話ならパイは実は一人ぼっちで孤独だったのでは?と疑問に思ったが、トラはパイの心の中の生きていくための本能だったことに気づきました。トラとの漂流は、自身のトラのような本能との共存であり、トラとの別れは、自身の中のトラのような本能との決別で、別れの時に振り返らなかったのは、自分自身でありながらもコントロールできない潜在意識(トラの部分)がそうさせたと考えられます。大人のパイは父親から学んだ教訓が自分を救ったと語っており、彼はトラになることで生き延びたのだと解釈できます。同時に宗教のくだりが長いことの意味も理解できました。彼はヴィシュヌの神をしばしば登場させていますが、ヴィシュヌはヒンドゥー教で「アヴァターラ」と呼ばれる10の姿に変身して地上に現れるとされている神様で、その10の姿の1つで4つ目の姿が「ナラシンハ=獅子の獣人」となっています。作品の中で、魚を獲ったパイが「ヴィシュヌの神が魚に変身して僕らを救った」というセリフがありますが、魚の姿はマツヤといいヴィシュヌの1つ目の姿です。4つ目の姿をそのままパイに当てはめると「ヴィシュヌの神が獣人に変身し僕を救った」となり、虎と獅子の違いはあれど同じ捕食動物であることから、大人のパイが小説家に語った「トラの話は神様の話」の意味が理解できます。

謎の浮島の意味
神様のお話→ミーアキャットの島、は横たわる「ヴィシュヌの神」です。この神は、その場に応じた姿に変身し人々に慈悲と恩恵をもたらす神ですが、同時に破壊と再生の意味を持ちます。そしてヴィシュヌの神の10のアヴァターラの中に8つ目の姿のクリシュナがいます。彼の口の中は「宇宙」でしたね。夜になると酸であらゆる生き物を溶かしてしまう湖は、つまり「口&胃袋」と考えられますが、表現を変えれば生命の輪廻転生(破壊と再生=宇宙)の意味を示しているのではないかと感じます。ヴィシュヌ神は、アナンタという多頭の蛇の上で寝ているのですが、これがミーアキャットを表しているのではないかと。そしてパイはミサンガを木の根元に結び付けますが、これには悲しい意味があります。神様のお話は「ヴィシュヌの神」が変身した「島全体がアヴァターラ」なんですね。パイは島の恵みに感謝し、島を背に旅立ちました。

謎の浮島は実は?ファンタジーで終わらせたい人は見ないで下さい。(どうしても見たい方は選択で見られます)
現実のお話→オランウータンは海に投げ込まれたでしょうか?そんなシーンはありませんね。2つ目の話ではパイの母親は海に投げ込まれてサメの餌になったとありますが、実は母親の遺体は船にありました。そう考えないとどうしてもこのカラクリが解けないのです。パイが死を覚悟し、究極の飢えと苦しみの中で、最後の助けとなったのは彼の母親です。パイは、死んだ他の2人で命をつなぎましたが、母親にだけは同じこと事ができません。だから「死」を覚悟したのです。当然、遺体は腐敗しているわけですが、パイはこれに発生した蛆を食すのです。神様の話の中では蛆はミーアキャットの事で、つまり浮島とは彼の母親の体です。島を出ることは母親との別れであり、同時に生きる気力でもあります。「光る花の中の歯」は骨を意味しており、蛆を食べなければ、いずれはこの幼虫に自分が食べられ、やがて骨になると言う意味で、きっと母親からの「どんなことをしても生きなさい」という、彼が感じたメッセージではないのでしょうか。彼は生きる気力をなくしていましたが、もう一度生きていこうと、母親の遺体の蛆を食し、その後、蛆を食料として確保し、母親の遺体の足首に「大事な人につけるお守りのミサンガ」を結び、輪廻転生を祈り、母親を海に埋葬したのでしょう。(あくまでも個人的な見解です。ひょっとすると他にも見方があるかもしれません)

最後に・・・アバターとはアヴァターラが語源です。この作品ではじめて知りました。アヴァターラとしてのパイの物語は決して夢物語ではなく、全てにおいて、その現実があり意味があるからこそ、このお話の小説はベストセラーとなったのだろうと思いました。勿論、映像は素晴らしいですが、それ以上に評価したいのは、現実が判ったあと、失望感で不完全燃焼に陥り、もっと深い意味があるだろうと、解けなかった謎をさらに追求したくなり、登場するアバッタラーが示すものが明確になったとき、再び感銘へと変化する事です。そして、ストーリーも結末も同じならば、やはり「トラと少年の物語」がいいと言う結論に。・・・・・あなたは現実派ですか?それともファンタジー派ですか?



ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 2枚組ブルーレイ&DVD (初回生産限定) [Blu-ray]
[監督]
アン・リー
[出演]
パイ・パテル       スラージ・シャルマ (11~12歳ユッシュ・タンドン/5歳ゴータム・ベルール)
成人のパイ・パテル  イルファーン・カーン
パイの父         アディル・フセイン
パイの母         タッブー
パイの兄、        ヴィビシュ・シヴァクマ/モハマド・アッバス・カリーリ/アヤン・カーン
パイの恋人       シュラヴァンティ・サイナット
カナダ人小説家     レイフ・スポール
貨物船コック       ジェラール・ドパルデュー

★受賞★
[第85回アカデミー賞] 監督賞/作曲賞/撮影賞/視覚効果賞



NHK宗教の時間 ヒンドゥー教の世界(上)―その歴史と教え (NHKシリーズ)

★外部関連記事★

Tatsuya's blog(備忘録)ライフ・オブ・パイ / トラと漂流した227日
私は、このシーンは一体なんのためにあるんだ、今までの感動がぶち壊しじゃないか。とドン引きしました。しかし、こう観客に思わすことは、アン監督の狙い通りだったのでしょう。途中で私も気がつきました。このラストのおかげで、この映画は単なる感動ファンタジー映画では無くなりました。ラストで観客は突き放されます。物語の真実は観客に託されます。おかげで観賞後もずっと物語を反芻させられます。ドン引きした私はアン監督の術中にはまってしまったのです。

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