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2013-03-23(Sat)

アレクサンドリア/哲学に身を投じた女性「ヒュパティア」

2009年 スペイン
Ágora西暦4世紀のローマ帝国末期時代。大都市アレクサンドリアが舞台のスペクタクル史劇です。キリスト教徒による異教の排斥が行なわれた時代に実在した一人の女性哲学者ヒュパティアが殉じた生涯を描く。

[あらすじ]
ヒュパティアは世界中で最も学問が栄えていたアレクサンドリア図書館長である数学者テオンの娘として生まれます。彼女は、哲学、科学、数学、天文学、文学等あらゆる教養を修めた人望のある女性でした。彼女がいたこの図書館は当時世界一であり文化のみならず、古代の神々(多神教)を崇め、宗教の象徴とされていた。当時、ヒュパティアの教えは学生達の心を掴み、彼女を慕う学生の一人オレステスは大勢の面前で愛を告白します。また、ヒュパティアのもとにいる奴隷のダウスも、密かに彼女に思いを寄せており、この日「彼女を誰の元にもいかせないで下さい」と神に祈ります。そんなダオスの心配など無用で彼女は研究に生涯をささげるような人物でした。

初期のアレクサンドリアはセラピスとイエスを混合して礼拝し、両者を差別なく崇拝していたのですが、そんな時代は過ぎ、東ローマ帝国皇帝テオドシウス1世は新興キリスト教及びユダヤ教を解禁。次第に一神教を唱えるようになり、アレクサンドリアに混乱が迫ります。そんな頃ダオスは、ふとしたきっかけでキリスト教徒となってしまう。



やがて多神教徒らはキリスト教が自らの宗教の絶対性を民衆に訴える際に、セラピスと其の他の神、すなわち古来の神々を愚弄したとして争いをはじめます。この争いで勝利したのはキリスト教徒。彼らはセラピス神殿と図書館を直ちに放棄することで反逆者を罪に問わないという条件を付けます。ヒュパティアらは出来る限りの書物を持ち図書館を明け渡します。すぐにセラピス神殿は破壊され、多くの図書館の本は焼却。キリスト教徒により世界中の多くの学問の記録と歴史がこの世から抹消されてしまいます。

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本を運ぶ途中のダオス。彼女を慕う気持ちは変わりませんがキリスト教徒であることを話せません。移動の途中、彼はヒュパティアらの元から姿を消しキリスト教徒側の修道兵士と合流します。しかしその後、少し時を経てダオスは彼女の元へ現れます。

状況を知ったヒュパティアはダオスは許し、奴隷の首輪をはずして彼を解放した。彼は立ち去ります。

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年月は流れ、多神教教徒の多くはキリスト教に転じ、彼女のかつての弟子「キユリロス」はキュレネの司教「オレステス」はアレクサンドリアの長官の要職についています。そして彼女も変わらず講義と研究を続けているなかで、今度は残った二つの宗教間、キリスト教徒とユダヤ教徒で対立が起こり、キリスト教はユダヤ教も駆逐。ユダヤ教徒は惨殺されるかアレクサンドリアから出て行くのです。

惨殺したユダヤ人の亡骸を焼却している横でダオスは迷います。「間違いを犯しているのではないか」と。

そんな中、彼女はキリスト教徒に呼び出されます。キリスト教徒らは彼女の科学的理性主義がキリスト教の指導者に精神的な影響を及ぼすと脅威を感じていました。彼女はキリストの洗礼を受けるよう告げられますが彼女は妥協しません。彼女はキリスト教を「古代の神々に比べ公平さも慈悲もない」と非難します。そこで彼女は問われます。信じるものを何も持たない貴方の意見を他者はどう受け入れるのですか?
「私は哲学を信じます」

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初期アレクサンドリアは差別なく信じるものの自由がありました。彼女が信じたのは神ではなく「新プラトン哲学」(ネオプラトニズム)でした。

ある日、テオドシウス1世は演説でキリストが弟子に送った手紙の一説を読み上げます。「女性は謙虚で礼儀正しく静かに従順に学ぶべき・女が教えたり男の上に立つのは許さない」ヒュパティアの行動はキリストの言葉に抵触すると・・・・矛先はヒュパティアへ向けられ、彼女の哲学を異端としました。さらに彼女を「魔女」であると指摘します。オレステスとダオスは顔色を変えます。

オレストスは彼女の身を案じ必死にかばうのですが、これにより自身の身も危険にさらされます。かばい切れなくなり、
彼はヒュパティアにキリスト信仰を受け入れて欲しいと涙ながらに訴えるのですが彼女は改宗を拒みます。

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同じ頃キリスト修道兵士たちによる不穏な動きを知る事になったダオスは、ヒュパティアに身の危険を知らせようとしますが、時既に遅く、
彼女は兵士に捕らえられてしまいます。残忍な殺され方をするよりはとダオスは苦悶の表情で彼女に手をかけます。


[あとがき]
この作品は、サスペンス的要素やロマンス的要素が主ではありませんが、奴隷であるダオスが主人にいくら想いを寄せても適うことがないどころか、想いを言葉にすることすらできない。遣り切れずあんな形でしか愛を表現できないのだという切ないシーンがいくつかあります。ヒュパティアも奴隷を卑下する言動もいくつかあり、ダオスの傷ついた表情と行動が、恋せど叶わずという当時の身分の違いの辛さを描いています。そんな奴隷たちにとって、キリスト教の出現は躍進的であったに違いありません。しかしキリスト教は彼女を敵対視。ヒュパティアの惨殺(西暦415年)ですが、キリスト教徒大司教の指図のもとに行われた可能性があるといわれていて、実際には、キリスト教徒たちは彼女の衣服を剥ぎ取り、生きたまま鋭いかきの殻で体の肉をはがし絶命するまで続けられたという。想像しただけで嗚咽してしまいそうです。苦痛は想像を絶するものであったでしょう。遺体は大衆の面前に晒され、その後死体を寸断され炎で焼かれたという。人権意識など無かった時代の歴史の一齣。現実は残酷です。死んでしまう事が運命だったならせめて映画のように亡くなって欲しかったですね。映画の中の彼女の最期は必要な演出でした。ちなみに、ヒュパティアが地動説とその動き(楕円)(のちにケプラーの法則と言われること)を発見したのは西暦300年代の終わりでしたが、その後このことが証明されたのは西暦1600年代初めにはいってからでした。実に1200年以上も経った後の時代です。もしも彼女が夢半ばで殺されずにすんでいたら、もしも図書館が破壊されてなければ、もしかしたら、現代は今より1200年進んでいた世界になっていたかもしれません。さらに、その後幾度となく繰り返されてきた宗教戦争が、どれだけ回避できたのだろうと思うのです。目に見えぬ神しか信じるものがなかった長い時代、何も責める事ができませんが、人類は宗教という名のもとで犯した愚かな蛮行により、古代の歴史の記録と共に千年に一人のとんでもない逸材をこの世から抹殺してしまったのです。この汚点は人類の教訓として語り継ぎ、宗教だけに留まらず、あらゆる視点から、二度と同じ過ちを繰り返さないことが、遠い昔の僅かな時を生きた一人の哲学者への弔いとなるのではないでしょうか。


アレクサンドリア [DVD]

[監督]
アレハンドロ・アメナーバル
[出演]
ヒュパティア レイチェル・ワイズ
ダオス    マックス・ミンゲラ ヒュパティアに想いを寄せる奴隷  (※監督のアンソニー・ミンゲラの息子)
オレステス  オスカー・アイザック ヒュパティアを愛する弟子。エジプト長官
テオン    マイケル・ロンズデール ヒュパティアの父
キュリロス  サミ・サミール 強硬派のキリスト教徒。後にアレクサンドリア総主教





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