アクセスランキング
2014-05-27(Tue)

上海の伯爵夫人/光りを失った男の純愛 その1

2005年 イギリス/アメリカ
上海の伯爵夫人日中戦争勃発1年前の中国、故郷の内戦により上海に亡命したロシアの「伯爵夫人」と、火災で妻と息子、更に事故で娘を亡くし、自身も失明した、かつては腕利きの外交官だった男のロマンス。歴史背景が色濃く再現され、その流れのなか消滅しつつある貴族たちの爵位の呼名が、儚く耳に残ります。 レイフ・ファインズは当然ですが、真田広之の演技に驚かされた作品でした。

[あらすじ]
男の名は「トッド・ジャクソン」、アメリカ人である。彼はある日、クラブで日本人「マツダ」と知り合った。ジャクソンは自分のバーを作りたいと考えており、クラブの話を始めると彼と意気投合した。外の世界から隔離された「夢のバー」だ。それに必要なのは、まずは理想的な女性だとマツダに語る。マツダが先に帰った後、盲目になってから、人の話し声がよく聞こえるようになっていた彼の耳に入ってきた会話のなかで、店内のホステスの中に、かつてロシアの「伯爵夫人」だった女性がいることを知る。彼女の名前は「ソフィア」。この当時、伯爵夫人のホステスなど、珍しいことでもなく、ジャクソンは彼女の存在を、特に気にもしなかった。
ソフィアの夫は既に他界しており、彼女は愛娘カティアと、夫の妹、義母と叔母夫婦と暮らしていた。当時、大勢のロシア人の貴族や官僚、資本家などのブルジョアジーが国外へ亡命し上海にも逃げてきたロシア人は多かった。ソフィアはホステスとして働き、一家の暮らしを支えていた。当時の上海にはかつて「伯爵」「伯爵夫人」と呼ばれていた貴族達が、中国人の下でみすぼらしく労働したり、女性ならばホステスとして生きていく事も止むを得ない事だった。しかし彼女の親族達は「貴族の肩書き」では食べていけないという事を全く判っておらず、ソフィアの事を「ふしだらな女」と辛くあたっていた。



hanachanono-img600x450-1397114321zdetfm14616.jpg

そんな彼女は店内で、盲目のジャクソンが、二人組みの悪党に狙われている事に気づく。彼女は彼が襲われないよう、それとなく自分のお客であるかのように腕を組んで店を出て行くことを促します。ジャクソンは自分の夢をかなえる、理想の女性だと直感し店をオープンさせる見込みをつけると、ソフィアが必要であると彼女をスカウトした。そして夢のバー「白い伯爵夫人」をオープンさせた。二人はその関係を仕事上だけと取り決め、お互いプライベートな事に触れることはなかった。こうして1年が経過した頃、上海を離れていたマツダが店に訪れた。

hanachanono-img600x450-1397064673s3fsbe6944.jpg

バーは繁盛し、マツダにはジャクソンが理想としていた世界を作り上げたように見えた。しかしジャクソンは「政治的緊張感」が足りないと言う。店を出たマツダは最初は理解できなかったが、後にそれがどういうことか気づく。そして彼は再び店を訪れ、「共産党関係者」「国民党関係者」「中国軍人」「日本貨物船の船員と日本の実業家」彼らを店に呼び寄せることを手助けすると告げた。こうして最終的な店作りがマツダの協力によって実現した。まるで二人で模型都市でも作るかのように・・。ジャクソンは、外の世界ではバラバラの彼らを、店の中ではバランスよく配置した。ジャクソンは彼らを呼び寄せる事ができるマツダが、一体何者なのか問いかけたが、彼は、はっきりとは答えなかった。

ある日、ジャクソンが、カフェでラジオを聴いている横を、ソフィアと娘カティアが通りかかった。仕事以外では一切の関わりを絶っているソフィアは、そのまま通り過ぎようとしたが、カティアがこの盲目の男が、母親の勤務先のクラブの人だとわかってしまう。何故、母親が何も声を掛けず通り過ぎたのか理解できなかったが、彼女はジャクソンのところへ駆け寄り彼に懐いた。彼も亡くなった娘の姿を重ねた。

hanachanono-img450x600-1395123938oxszqn66813_20140527012359852.jpg
カティアが言う「おじさん、ママと私を船で蘇州に連れてって」以前、他の子が蘇州へ船で行くのを見た彼女にとっての憧れの船の旅だ。

外の世界では、共産党と国民党の対立、日本軍の不穏な動きも強まっている。そんな世界を遮断したバーの中は、ジャクソンにとって理想世界だった。一方、マツダは、外の世界に、より大きなキャンパスを描いていたが、バーの中は、自分の責任を忘れ、語り合う充実した空間だった。そんなあるとき、かつて部下の息子でジャクソンを慕っていた青年が店に訪れた。このとき、彼からマツダが何者なのか聞いてしまう。その答えは明確な物ではなかったが、「マツダが現れた場所」は、その後日本軍がやって来て占領する・・・というものだった。

hanachanono-img600x450-1397064673cih5da6944.jpg

あるとき、特権階級を忘れられない叔母夫婦は用もないのに領事館に行った。すると昔の教え子に偶然再会。それを切欠に香港行きを手配してもらうことが出来た。しかし金が要る。イギリス領である香港に行けば、安定した暮らしができると愚かな義母と義妹は思い込んでいた。ソフィアは義妹にお金が必要だと言われ、金を用意し義母に渡した。無論お金の出所はジャクソン。彼はソフィアの様子に気がつき、理由を言わなかった彼女にお金を渡したのです。ジャクソンはそれが渡航費用であり、お金を渡せば彼女は戻ってこないことも察知していた。さらに同時期に日中戦争が勃発。いずれにせよ上海を脱出しなければ危険な状態となる。しかし義母らは、ソフィアの旅券だけを買わなかった。彼女のクラブ勤めは伯爵家の汚点だから上流階級の人々に受け入れてもらえない。ソフィアは上海に残ること、それがカティアの将来の為と言われ、娘だけを連れて行かれた。見捨てられた彼女は娘との別れに悲しみ、部屋で泣き崩れていた。それを知った下の階に住んで親しくしていたユダヤ人のサミュエルは娘を取り返して、一緒にマカオへいこうとソフィアを説得した。こうして二人は港へ向かう。

tyanoo-img523x419-1347094963koarok81563.jpg

一方ジャクソンは混乱の中、店に行った。他のところにもう夢はない。そんな彼の前にマツダが現れる。マツダにとってもこのバーで過ごした、彼との時間はかけがえのないものであった。そして、この世界を理解していた唯一の人物である。しかし彼の、外の世界での、より大きなキャンパスは、「白い伯爵夫人」を消失させるものだった。マツダはジャクソンを安全な場所に連れ出そうとするが、ジャクソンは拒んだ。マツダは、店を去る前に、ジャクソンに「白い伯爵夫人」は命尽きるが、あなたは、別の世界を作るべきではと伝えた。そして、その伯爵夫人が数分前に港に向かっていたのを見かけたと伝えた。こうしてマツダはジャクソンに最後の道を示してバーを立ち去った。

hanachanono-img450x600-1395123938oxszqn66813_20140527025438d95.jpg

ジャクソンは、ひとつの望みを賭けて、手探りで港を目指し歩き出した。彼はその耳でカティアの居場所を探り、彼女を見つけ、ソフィアとも再会。マカオの船に乗り込んだのです。そして、彼は自分の望みを伝えます。今度は、契約でもなく、友情関係でもありません。混乱の最中、かけがえのないひとつの家族が生まれたのです。その様子は、いつか、カティアが港にあった箱の中で見た映像と同じ光景でした。

hanachanono-img600x450-1397938549vsaxn47671_201405270240102f2.jpg

とても良い脚本です。これを手がけたのは長崎県出身の日系イギリス人作家「カズオ・イシグロ」という方。日系人だった事でさらに驚きました。彼は小説では多くの賞を受賞していて、いくつかの作品が映画化されています。当作品は日本人の中国侵略時代が舞台なので、あまり日本人受けしないかもしれませんが、真田広之が演じるキーマン「マツダ」が、レイフのような一流俳優と肩を並べても、全く見劣りしない事が嬉しかったです。また、ナターシャ・リチャードソンの母親のような愛情を表した演技も合っていましたね。若くして亡くなられている事が寂しいですが・・。ところで、ソフィアを虐めた親族たちの末路はというと・・・実は、納得できるようにしてあります。ポルトガル領であったマカオは、この当時、戦禍に巻き込まれることはありませんでした。一方、ソフィアを見捨てた親族が向かった、イギリス領の香港は、この4年後に、日本軍がイギリス軍を放逐し占領します。唯一、ソフィアに優しかった、ボケてた叔母は早く老衰で亡くなっていればいいなと思いました。(フィクションなので、日本侵略前にお迎えがきたことにしましょう) 何故ならその後、「外国人収容所」「強制労働」という現実が待っているからです。


[監督]
ジェームズ・アイヴォリー
[出演]
トッド・ジャクソン          レイフ・ファインズ
ソフィア・ベリンスカヤ伯爵夫人 ナターシャ・リチャードソン (2009年3月18日/満45歳没)
マツダ                真田広之
グルシェンカ            マデリーン・ポッター
ピョートル・ベリンスキー公爵   ジョン・ウッド
ヴェラ・ベリンスカヤ公爵夫人  ヴァネッサ・レッドグレイヴ
オルガ・ベリンスカヤ        リン・レッドグレイヴ (2010年5月2日/満67歳没)
カティア・ベリンスカヤ       マデリーン・ダリー
サミュエル              アラン・コーディナー



★外部関連記事★

株式日記と経済展望/映画 『上海の伯爵夫人』 上海の夢が戦乱で泡と消える映画
それはそれとして、望外の喜びもあった。真田広之の堂々たる紳士振りだ。目を疑うほどに素晴らしい演技で、魅了させてくれた。なにしろ、あの、レイフ・ファインズに一歩も引けを取らず、それどころかファィンズを圧倒さえしていた。真田の秀逸な演技を観るだけでも充分な価値がある。真田の役どころは、上海で暗躍する謎の日本人だ。酒場で元外交官のレイフ・ファインズと語り合い、友情を深め、次第に盲目のレイフの心の中にまで忍び入り、やがてはレイフを翻弄するまでになる。この難しい役を、真田は見事なまでに演じ切った。映画を観る前までは正直なところ、これほど重要な役だとは想像だにしていなかったので、驚きと喜びが入り混じった視線で食い入るように眺めていた。レイフといえば、英国の中年紳士を演じさせれば右に出る者がいない、優雅な俳優だ。その男を相手に、真田は正々堂々互角に渡り合っているのだから、凄い。
 

スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

ブログ内検索
ブログ内ページランキング
外部アクセス元ランキング
プロフィール

ちゃのりん

Author:ちゃのりん
映画から歴史を探るのが好きです。
俳優&映画紹介と、ノンフィクション映画の実在の人物像も探ります。


★好きな俳優★

ジョナサン・リースマイヤーズ

ssssj.jpg


お気楽ブログ55011enn_20150420222943fef.jpg


アクセスランキング
[ジャンルランキング]
映画
199位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
洋画
17位
アクセスランキングを見る>>

にほんブログ村 映画ブログ 外国映画(洋画)へ
にほんブログ村 歴史ブログ 世界史へ

新作映画情報「ぴあ映画生活」ドラマ
アクセスカウンター



RSSリンクの表示


お役立ち
ブログ翻訳
favorite
・★前田有一の超映画批評★

・映画ライター渡まち子の映画評

・死ぬまでに一度は行ってみたい場所

・イナダ・ラングエイズ研究財団(ILFAR)稲田頼太郎

・NPO法人イルファー稲田頼太郎
(One Coin のご寄付を!)

・薬屋のおやじのボヤキ

・世界飛び地領土研究会
・欧州:世界遺産めぐり

・不思議館 古代の不思議

・KIKIの今日

・面白いおすすめ映画20選!騙されたと思って観て欲しい【最新版】

カテゴリ
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アクセスランキング