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2014-03-02(Sun)

王妃マリー・アントワネット/無邪気な王妃の「無関心」の罪

2006年 フランス/カナダ
マリーアントワネットオーストリア皇女として生まれ、14歳でフランス王太子のもとに嫁ぎ、革命により37歳で死刑台に登った、有名な王妃マリーアントワネットの物語です。この作品は、最初から最後までずっとナレーションで物語が進みます。そのため俳優のセリフは少なめで、学校教材としても使えそうな作品です。時代背景と政治的背景が説明されながら進むので、理解しながら観られるのが、この作品の長所でしょう。他のマリーアントワネット関連の映画と異なり架空の設定をしていたり、明白ではないことをあたかにそうであったかのように想定して作っていないため、現実的なマリーアントワネットの姿が映し出されています。フランス革命が始まるまでは、あまり面白みはありませんが、マリーアントワネットを知ると言う目的であればお勧めの作品です。ドラマの作りが地味な分、衣装、髪型、アクセサリーや小物に至る大変細かいところまで、綿密に装飾されているので視覚的には飽きることはありません。また、宮殿の撮影はCGもありますが、他の映画と比較しても多く使われており、建物内ならず各所の庭園なども見所です。これだけの宮殿内ロケを敢行出来たのは、歴史の記録に忠実で真面目な作品でもあり、かつ自国製作でもあることの強みでしょうか。

西暦1770年のフランス。王太子ルイとアントワネットの結婚式がヴェルサイユ宮殿で挙行された。この時、既に国庫は火の車。国民は貧しい暮らしをしていたが、アントワネットを歓迎した。僅か14歳の少女にはベルサイユ宮殿の外の世界など知るよしもない。結婚した夫は身体的な問題があり、真の夫婦の関係になることなく数年経過する。やがて退屈な古いしきたりに飽き飽きしたアントワネットは気晴らしにと、宮殿を抜け出しては賭博場へ出かけ大金を使う。彼女は宝石やドレスも大好き。後に彼女に付けられるあだ名は「赤字婦人」。

夫の兄弟には二人の弟「シャルル10世」と「ルイ18世」それに3人の姉妹がいた。義理の父となった王ルイ15世とは、親しくなったアントワネットだが、彼の寵姫デュ・バリー夫人は娼婦からの成り上がり。王妃のように振舞う彼女をアントワネットは毛嫌いし、徹底的に無視した。しかし後に、アントワネットの母であるマリア・テレジアからの通達で、アントワネットは譲歩し、デュ・バリー夫人に声を掛けることとなる。1774年ルイ15世崩御。ルイ16世が即位するとデュ・バリー夫人の居場所はなくなり、一時修道院へ移ったのち、彼女は他の貴族の愛人となる。

享楽的なアントワネットは夜毎仮面舞踏会。既に結婚から7年。なかなか子供が出来ないので彼女の兄レオポルト2世 (神聖ローマ皇帝)がやってきた。無能な医者とウブなルイ16世に呆れた兄だが、彼のアドバイスで夫婦生活は解決。やがてアントワネットは王女を産むと、ホッとするシャルル10世とルイ18世。「俺達にもチャンスはあるさ、兄貴が王子が出来ないうちに死んでくれればね」。一方アントワネットは子供が生まれると賭博はピタリとやめた。やがて彼女がフランスに来る前に亡くなっていた、ルイ15世の公妾ポンパドゥール夫人のために建てられたプチ・トレアノン宮殿を与えられた。フェルゼン伯爵との関係を噂さされる事もあったが、それでも国王と仲睦まじく待望の王子が生まれる。これを快く思わなかった弟達シャルル10世とルイ18世がアントワネットの悪い噂を流したのではないかとも伝えられている。

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母になっても相変わらず彼女が作るドレスは、年に170着。そしてプチ・トレアノンで、のんきな暮らし。お気に入りの少数の貴族だけを呼んで頻繁にパーティ。ベルサイユで使うろうそくの数は、一日1万本。1本のろうそくは労働者の一週間分の賃金。彼女は相変わらずベルサイユの外の事を知ろうとしない。高額な税金と農作物不作で飢饉に襲われ、飢え死になってしまう国民もいるその頃、アントワネットは、取り巻き達に官位を与え、多額の年金を与える。特に悪名高きポリニャック婦人には膨大な額を与えた。一方、プチ・トレアノン宮殿に呼ばれない貴族達は大層妬み、マリーアントワネットとその取り巻きの貴族を非難した。王妃の悪評は国民だけではなく、ベルサイユ内でも高まる。

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やがて追い討ちをかけるように、有名な首飾り事件が発生する。犯人はジャンヌ・ド・ラ・モット伯爵夫人。この事件にはアントワネットは一切関与していないのに、国民はそれを信じず、王妃の陰謀だと噂になった。このように既に国民に不評であった王政はジャンヌを死刑にできなかった。いつ暴動が起きるか判らないからだ。それほど王政に対する信頼は悪化していた。ジャンヌは刑を受けるも命拾い。

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国民の飢えは全てアントワネットのせい?実は、過去に彼女の浪費とは比べようにならないほどの多額の出費があった。先代のルイ15世が、対外戦争に膨大な軍事費を使ったことが大きな打撃となっていたのだ。そんな事を知らない国民の憎悪のはけ口は、アントワネット一人に集中する。ルイ16世は財務長官を変えるなどして財政改革を行おうとした。当時、聖職者と特権階級の人々は税金を免除されていたが、当然行き着くところは税の平等化。財務長官は王に提案する。「税制の徴収を平等にする事で解決する」と。しかしアントワネットは、あくまでも国債を発行するという。特権身分の激しい反対もあり、結局王は彼女の言いなりになる。すると行き詰る国庫対策に「三部会だけが課税の賛否を決める権利がある」と主張したパリ高等法院は、第三身分(平民)から支持された。どうしても解決の糸口をみつけられない王は、三部会の開催を認めざるえなくなる。国王は自ら三部会を主導し問題解決を目論んだが結局、今までどおりの身分制度では解決できる見込みなどなかった。議論は進まず愛想をつかした平民の代表達は、三部会に見切りをつけ「国民議会」を発足。そして国王に国民議会を正式な議会であることを認める事と、憲法の制定を要求した。また第一身分、第二身分の代表者の中にも絶対王朝のまま解決することが無理な事を理解している者は国民側に寝返った。やがてルイ16世は、国民議会を正式な議会として承認せざるえなくなる。

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承認を得た国民議会は憲法制定国民議会と改称して憲法制定に着手する。しかし王はこれに反対し、平民に圧力をかけようとヴェルサイユとパリに軍隊を集結させた。軍隊が動員されたことを知ると国民は、それに対抗するため市民軍を編成し、武器弾薬が保管されているバスチーユ牢獄を襲撃する計画をたてた。王は、国民側寄りであり軍隊を動員する事に意見したネッケルを罷免すると、国民の怒りは頂点に達し、市民軍は3日後の1789年7月14日バスティーユを襲撃した。慌てた国王はネッケルを呼び戻したが、もう遅い。この事件は苦しんでいた人々の心に連鎖し、あっという間にフランス全体に飛び火した。あちこちで暴動が起き王政と封建制度は崩壊。貴族達は次々に亡命。この混乱の中、国民議会は封建的特権の廃止を訴え人権宣言をした。しかし国王がまだ主権者であった為、国王に承認が求められた。しかし、アントワネットが第三身分を侮蔑していた事や、王の周囲は強硬派で占められていたためルイ16世はこの訴えを拒否した。

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このように、深刻な状況を全く把握できていない国王夫婦は突然現実を知ることになる。10月5日パリの数千の飢えた女性達が武器を持ってヴェルサイユ宮殿に乱入、国王と議会に食糧を要求した。一部は暴徒と化したため危険を感じたルイ16世は人権宣言を承認した。

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王一家はテュイルリー宮殿に移され、この後はパリ市民に監視されて暮らすことになる。アントワネットと、彼女の子供を心配したフェルセン伯爵は、国外に逃れることを説得。彼は王妃の実家である、オーストリアへの逃亡を計画し手配した。だが、国王一家はパリを脱出するも、国境の手前の町で国民に見つかりパリへ連れ戻されてしまう。王の逃亡によりフランス国民は衝撃を受け、さらにルイ16世は宮殿を出たときに、革命思考を批判した自らの書き物を宮殿に残してきたため、王の目論見が暴露されることとなり、国王を擁護していた最後の国民の支持まで失った。チュルイリー宮殿に戻った国王一家は、以前にもまして監視され、憲法が制定されると、王は拒否権を除く一切の権限を失っていた。王はその拒否権を頻繁に行使したため、さらに民衆に憎まれることとなる。アントワネットは諦めず、新政府と戦うよう王に求めていた。さらに、彼女は内密にオーストラリアとプロセインにフランスへの攻撃を求めた。母国オーストリアがフランス革命への干渉をしたことがきっかけとなり、当時のフランス革命政府はオーストリアへ宣戦布告。フランス革命戦争が勃発する。アントワネットは、戦争でフランスが負ければいいと思った。彼女が敵軍にフランス軍の作戦を漏らしているとの噂がたつと、パリ市民と義勇兵は再びテュイルリー宮殿を襲撃。王政は廃止され、国王一家と国王の妹エリザベート王女はタンプル塔に幽閉される。時は恐怖政治が革命を主導していた。

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恐怖政治により革命裁判所が設置され、王の裁判がはじまるとその裁決は一票差で有罪、ルイ16世は処刑された。さらに革命裁判所は、これから始める多数の反革命者を処刑するために、最初の生贄としてマリーアントワネットの首を欲した。アントワネットは、7才の息子と引き離されたのち、コンシェルジュリー牢獄に移され、その後裁判が行われた。提示された罪状については証拠などなく、業を煮やした裁判所は息子の近親相姦の罪まででっち上げる。彼女は毅然とした態度で無実を主張したが、最初から決まっていた裁判の結果は覆ることなく、彼女は死刑判決を受けた。執行前日、アントワネットは王の姉、エリザベート宛に手紙を書いた。しかし手紙は永遠に彼女に届く事はなかった。何故なら、エリザベートにもまた、悲しい運命が待ち構えていたから。テルミドールのクーデターを経て1799年のナポレオンの政権掌握までフランス革命は終わりません。そして、この革命が終わっても、王権は復活し、人々が再び飢えに苦しむ時代がやってくるのです。

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マリー・アントワネットの処刑は、フランス革命の序章に過ぎませんでした。先代の王や王妃、貴族達の堕落した生活の仇をその一身で受け、その激動にわが子の命さえ守ることが出来なかった悲劇の王妃。たった一冊の本も読破できなかった彼女は賢い王妃ではありませんでした。けれど子を思う母のように、国内の不幸な人々を知り、心を痛める優しさががあれば、歴史は変わっていたのかもしれません。裁判所で提示された罪は事実を歪曲されたものでしたが、国庫全体から見れば、「僅かな割合」と言われていた、彼女が使ったお金で、どれだけの人の命を救えましたか?と問われたら、「私は無罪です」と、この映画のように彼女は胸を張って言えたでしょうか。アントワネット王妃の物語を最初に知ったとき、「見ない」「気が付かない」「知ろうとしない」という事も罪なのだと思いました。しかし、国中の人からの恨みの念を浴び、死んでいった彼女の受けた罰は、その罪以上のものです。歴史の解明と共に真実が明らかになった事は僅かな救いといえるでしょう。

王妃マリー・アントワネット [DVD]

[監督]
イヴ・シモノー

[出演]
マリー・アントワネット カリーヌ・ヴァナッス
ルイ16世        オリヴィエ・オーバン
フェルゼン       ダニー・ギルモア
ルイ15世        ポール・サヴォア




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アントワネットと子供達                マリー=テレーズとルイ=ジョゼフ王子      ルイ17世(ルイ・シャルル)

◆内部関連記事◆

・「首飾り事件」のジャンヌ・ド・ラ・モット伯爵夫人の物語→マリー・アントワネットの首飾り
・フランス革命が終結した後のフランスを描いたフィックション作品→レ・ミゼラブル (ミュージカル映画)

★外部関連記事★

母の死を知らず母の部屋の前に花を置いた王子のあまりにも悲しい生涯→ルイ17世(享年10歳)
アントワネットとその家族を救出しようと試みた者達→マリー・アントワネット救出大作戦
国外へ脱出することを拒絶し一家の元を離れず運命を共にした心優しい王の妹→エリザベート・フィリッピーヌ・ド・フランス
アントワネットの身を案じイギリスから戻り虐殺された、アントワネットの元女官長→ランバル公妃マリー・ルイーズ
捕虜との引き換えに利用された王女のその後→フランス王ルイ19世妃 マリー・テレーズ(まりっぺのお気楽読書より)


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