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2014-12-24(Wed)

大統領の執事の涙/黒人なしで語れぬアメリカ史

2013年 アメリカ
大統領の執事の涙ホワイトハウスで34年間、執事をしていたユージン·アレンという一人の黒人をモデルにした物語。 冒頭で「実話に着想を得た」と紹介があり完全な実話ではありませんが、彼は黒人でありながらも最終的にホワイトハウスの執事の中の最も高いランクを達成したという人物です。作品を観て感じたのは、仕えるだけを合言葉にしている彼らが歴代の大統領に与えてきた影響は計り知れないものだったのだろうと想像します。大統領たちの個性と、主人公の家族をとおし黒人の「白人と同等の権利」を得るための戦いと、それに関連する事件や世情の変化を映し出している。マルコムX、キング牧師、マンデラ氏、そしてオバマ大統領まで。歴史上の出来事や人物に興味を抱かせる面白い作品です。

[あらすじ]
舞台は「ジョージア州のメーコン」からはじまる。奴隷時代には綿花栽培が盛んな地域でした。主人公は「セシル・ゲインズ」。彼は両親と綿花農園で綿花を摘んでいました。肌の色が白い母親は一見白人ですが、おそらく黒人とのハーフで「黒人とみなされた女性」。黒人と白人のハーフは大多数が色が黒いが、中には低い確率で肌の色が白い子が生まれるという。その母は農場主の息子に乱暴され、さらに父親を銃殺されます。農場主の女主人は不憫に思ったのか、彼をハウスニガーとして家の中で働かせるようになります。しかし、成長してセシルは気づきます。農場は廃れ、かつていた仲間の黒人達は今や土の中。そして「ここにいたら殺される」と。彼は、母親に別れを告げ農場をを出て行きます。彷徨い、仕事も食物もない中、出会った黒人の男の助けによりホテルに勤めることになります。仕事のノウハウを教わり自立。やがて家庭を持ち子供にも恵まれます。幸せな家庭を築き生活していましたが、ある日ホワイトハウスの事務主任に見出され執事として勤めることになるのでした。

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アイゼンハワー役はロビンさん            「クソガキ」とはケネディのことです。      大統領になるためだったら何でも言っちゃう。

最初に仕えた大統領は第34代大統領「ドワイト・D・アイゼンハワー」。(任期 1953年~1961年) 時はソ連との冷戦時代。配役はロビンさんです。この時期、アーカンソーのリトルロック各地で白人と黒人が同じ学校に通う「融合教育化」が進められるようになりましたが、黒人学生の登校を拒否する者たちに対し、大統領は軍を派遣します。セシルは国が初めて黒人の為に動いたと期待を膨らませます。一方、この頃の行政で代表的な出来事は「キューバ危機」。キューバ側の経済援助の申し入れの会談の際に、大統領はゴルフで(?)キューバーにかわりに行かせたのが、このときの副大統領で、後に大統領となる、「ニクソン」でした。彼は、キューバを「共産主義者」であると大統領に報告をし、アメリカとキューバが対立。そのニクソンは、この作品上でも姑息な奴で笑えます。主人公セシルの家庭では、長男のルイスが南部のテネシー州の大学へ進学。南部は未だ、黒人への人種差別問題が北部より根深く残っているのでセシルは反対しましたが、ルイスの信念は変わりません。世の矛盾を感じながら成長し親元を離れたルイスは、差別に抵抗するため、公民権運動に参加。ルイスたちは白人と黒人の席を分けている飲食店で、人種差別の撤廃を非暴力で求めるために行われる座り込みに参加した。これに当時、僅かだったとは思いますが、白人も参加していて、黒人と共に耐える姿も。こういう人たちもいたのだと感服。(ナッシュビル座り込み/1960年2月~5月) 

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次の大統領は「ジョン・F・ケネディ」 (1961年~1963年)。この若い大統領と、その家族をセシルは非常に好意を持って接していました。ケネディの娘で、まだ幼い子に「フリーダムバス」って何?とセシルは聞かれます。1960年末になっても、南部のバスは席も黒人と白人を分離していたのが当たり前でした。このバスは、公共交通機関の人種差別の撤廃の為と、白人と黒人の席を分けることなく、南部を移動した長距離バスです。これが度々白人に襲われる。映画の中では「KKK(クー・クラックス・クラン)」に襲われ乗車していたルイスは生死さえわからなくなってしまいます。彼は無事だったが、セシルがどれほど止めても学校にも行かず、公民権活動をやめない息子を許せません。一方、各地でデモが起り、公民権活動をしているセシルの息子ルイスが酷い暴力を受けていることを知り、ケネディは、これらの問題に心を痛めます。そして、彼は黒人と白人の平等化の具体的な法案を掲げます。しかし、知られるとおり彼は暗殺者の銃弾に倒れます。セシルは大統領の死に悲しみ泣き崩れるのです。

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父親の言うことを聞かないルイス        絶縁状態のルイスの事をケネディは知っています。 後に、この法案はジョンソン政権下で成立

3人目の大統領は「リンドン・ジョンソン」 (1963年~1969年)。活気のある人物です。執事の仕事も忙しそうです。ジョンソンは、「クロ」と「ニガー」を連呼します。ケネディ政権から引き継いだベトナム戦争への軍事介入を拡大させた人物。この頃ルイスは「キング牧師」のlところにいます。キング牧師が率いる、セルマで行われた黒人の選挙権を求めるデモ行進で、市と群の警察官が無抵抗の参加者を暴力で打ちのめし、その様子が報道されると、その凄惨さに、「血の日曜日」 (1965年)と呼ばれることとなった。 大統領はセシルに「息子はどうしてる?」と聞きます。セシルは「たぶんセルマに」と答えます。ジョンソン大統領は、選挙権を認めるよう動きはじめます。「クロ」と「ニガー」を連呼していたジョンソンが、僅かに変化しているように見えます。3年後の1968年、キング牧師が暗殺されると街は暴徒と化した黒人で溢れた。そして、国内ではベトナム戦争の反戦運動が活発化する。身動きが取れなくなった大統領は任期を終えた後、自ら政界を引退した。

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デモを止めさせる為の指示をトイレで・・      ベトナム反戦運動のデモ          父の仕事を誇りにしていないルイスにキング牧師は  
次は、いよいよ念願の大統領となった「リチャード・ニクソン」。セシルにとっては4人目の大統領です。ルイスは今度は、「ブラックパンサー党」に所属。彼女と共に活動に専念していた。セシルは未だ学校にも行かず活動をやめない息子をさらに突き放します。この党は、同じく公民権運動を指導していた「マルコムX」の暗殺後に活動を開始し、キング牧師が暗殺されてから活動に盛り上がりを見せていた。キング牧師の非暴力主義に対し否定的であったブラックパンサー党は、暴力主義的な動きを見せていたため、ルイスはその思想に共感できず離党する。同じ頃、ルイスのもう一人の息子、チャーリーは、自分もアメリカの為に戦うと、大学をやめベトナム戦争に出兵してしまう。ニクソンはベトナム戦争からのアメリカ軍の完全撤退を実現したが、チャーリーは撤退前に戦死してしまいます。ベトナムからのアメリカ兵の撤退と同時期の1972年、ウォーターゲート事件が明るみになる。不正が発覚したニクソンは辞任に追い込まれた。大統領任期中の辞任はアメリカ史上初めてのことであった。

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父の仕事を軽薄している息子に目が覚めるような一喝    弟チャーリはベトナムへ       事件でやつれたニクソンの往生際の悪さ

次はニクソンの辞任をうけ、選挙無しで副大統領から昇格した、ジェラルド・R・フォード大統領。任期は2年半ほど。ジミー・カーター(1977年~1981年)の大統領時代になると、黒人の環境はだいぶ変化しています。息子のルイスは下院議員に立候補。彼の当選はなりませんでしたが、そんな息子の姿をセシルと妻のグロリアはテレビで見守ります。長年分かり合えず、未だに修復できない父と息子の関係に心を痛めるグロリアは、セシルに息子への歩み寄りを望みます。

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セシルにとって最後に仕えた大統領。ロナルド・レーガンは、セシルをとても頼りにしています。大統領の信頼を得ていた彼は、ホワイトハウスの中で従事する白人と黒人の待遇の平等化も実現させました。さらに、大統領夫人に、晩餐会に「招待客」として妻を連れて出席するように言われ、夫婦は晩餐会に出席。長年の夢が適ったグロリアは喜びましたが、セシルは違いました。執事として仕事をこなす同僚を、「給仕される側」の目線から捉えることに・・。従事する彼らを見て、自分も「二つの顔を持って生きてきた」のだと途方にくれた。セシルは今も絶縁状態である息子が言った、「白人向けの顔」というものを間近で見、複雑な気持ちになります。さらに息子は犯罪者などではなく、アメリカを変えたヒーローだったということに気づいた。息子を理解しないまま、あまりにも長すぎた絶縁状態に彼は空しくなったのです。一方、レーガンは、この時期はまだ、反共産主義の名のもとアパルトヘイトを支持。マンデラ氏が敵ではないかと警戒していた。マンデラ氏の解放とアパルトヘイト撤廃の声が世界中で上がってきており、アメリカの議会でもマンデラ氏の解放の為に、南アフリカへの経済制裁を行うという法案が上がっています。しかし、大統領は、議会がアフリカへの経済制裁を可決すれば、拒否権を行使するといいます。そんな会話を聞きながら、仕事に打ち込めなくなったセシルは退職することを決めます。そして彼が向かったところは、息子ルイスのところだった。ルイスはマンデラ氏の解放を唱えています。親子は和解し、なんと、セシルはルイスと一緒に、マンデラ氏解放のデモ行進に参加するという。そして・・・。

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鉄格子の中で二人はなんだか嬉しそう      二人とも年はとりましたが幸せそうです。    オバマ大統領

やがて息子ルイスも結婚し、夫婦は孫にも恵まれ平凡で幸せな生活を送ります。「しかし続きがあるのです」とセシルは続けます。「まさか、黒人が大統領候補になろうとは」と。二人は毎日選挙の日を楽しみにしていました。選挙の前日、妻グロリアは老衰の為、静かに息を引き取ります。選挙は見事、バラクオバマが勝利。アメリカ初の黒人大統領に就任します。年老いたセシルですが、その後、大統領に招かれ、ホワイトハウスの大統領室へしっかりとした足取りで向かうのです。

[あとがき]
物語は、黒人奴隷?という不遇な子供時代から始まりますが、実は途中で矛盾に気づくのです。何故なら、リンカーン大統領の時代に憲法が修正され、奴隷が解放されはじめたのが1865年。歴代の大統領はバラク・オバマまでが登場する。普通に考えても150歳以上生きていないと、奴隷時代を体験してオバマに会うなんてありえないことです。最初はスクリーンから年代を見過ごしていたので、再び年代を見直してみたら、物語のはじまりは1926年。実に奴隷解放後から半世紀以上後の設定になる。つまり、あたりまえのように街に吊るされる黒人の死体や、いきなり銃で黒人を撃ち殺すことなど冒頭の黒人に対しての扱いは非現実的に思えるのです。この時代にはもう「黒人奴隷」はいないのですから。しかし、奴隷的な扱いの「農奴制」のような風習が残っていたようですので、農奴の扱いが実際にこのようなものであったなら、その説明が不可欠だったはずです。彼らを「奴隷」と誤った境遇に誤解させる冒頭の作りは決定的なミスだと思いました。いっそのこと、子供時代のことはバッサリ切り捨てて物語を作ったほうが良かったかもしれません。けれど、農場を出てからのストーリーは、そんなことなど、ふっとばしてしまう位、面白いのです。アメリカの歴史と公民権運動。物事は待っていればいい方向に向かうのではなく、行動して変えていくものなのだと改めて思う。彼の息子の活動に関しては、おそらく多くは脚色であろうと思われますが、家族の絆と夫婦愛の描き方が心情に訴えるとても良いものです。特に妻役「グロリア」が素敵でした。反対に、「あちゃちゃー」と思ってしまったのは、彼の同僚の、最後は一体何の話なのか判らなくなってしまうシモネタジョーク。これだけは流石にいただけない。このセリフを言っているのは、私は結構好きな黒人俳優で、CGジュニアでした。なんだかお気の毒。 こんなシモネタいらなかったです。この部分と、冒頭の作りが、もっとしっかりしたものであれば、アカデミー賞[脚本賞] あたりを受賞してもおかしくないはずだと思いました。子供達がアメリカ史を勉強する切欠となりえる、優秀なものだと思うのですが、この欠点さえなければと、勿体無く感じる作品なのです。

大統領の執事の涙 [DVD]


[監督]
リー・ダニエルズ

[出演]
セシル・ゲインズフォレスト・ウィテカー
グロリア・ゲインズオプラ・ウィンフリー
ルイス・ゲインズ(長男)デヴィッド・オイェロウォ
チャーリー・ゲインズ(次男)イライジャ・ケリー
アール・ゲインズ(セシルの父)デヴィッド・バナー
ハッティ・パール(セシルの母)マライア・キャリー
ハワード(セシルの隣人)テレンス・ハワード
キャロル・ハミー(ルイスの恋人)ヤヤ・ダコスタ
トーマス・ウェストフォール(地主の息子)アレックス・ペティファー
アナベス・ウェストフォール(地主の女主人) ヴァネッサ・レッドグレイヴ
メイナード(セシルの恩人)クラレンス・ウィリアムズ三世
カーター・ウィルソン(同僚)キューバ・グッディング・ジュニア
ジェームズ・ホロウェイ(同僚)レニー・クラヴィッツ
ドワイト・D・アイゼンハワーロビン・ウィリアムズ
ジョン・F・ケネディジェームズ・マースデン
リンドン・ジョンソンリーヴ・シュレイバー
リチャード・ニクソンジョン・キューザック
ロナルド・レーガン アラン・リックマン
オプラ・ウィンフリー/デヴィッド・オイェロウォ/イライジャ・ケリー/デヴィッド・バナー/テレンス・ハワード/ヤヤ・ダコスタ/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/クラレンス・ウィリアムズ三世/キューバ・グッディング・ジュニア/ロビン・ウィリアムズ/ジェームズ・マースデン/リーヴ・シュレイバー/ジョン・キューザック/アラン・リックマン

◆内部県連記事◆

・奴隷解放といえばこの方→リンカーン ダニエル・デイ=ルイス /南北戦争の終結と奴隷解放
・レーガンが拒んだアフリカへの経済制裁は行われます。そして開放後のマンデラ氏が行ったこと→インビクタス/負けざる者たち
・人種差別により罪を着せられ約30年後に無罪で釈放された黒人世界チャンピオンとある少年の物語→ザ・ハリケーン
・チャーリーと同じように、大義を掲げベトナム戦争に志願した男の物語→プラトーン


★外部関連記事★

Fly on the Cloud! オータム マガジン/感想・映画「大統領の執事の涙」
「ホワイトハウスの執事になった黒人男の話かと思いきや、半分は息子の解放運動家の話だな。要するに黒人解放運動の映画だ」「それが面白いの?」「そうだ。なぜなら、過去のアメリカは今の日本と重なるからだ。けして可哀想な黒人のお涙頂戴の映画には見えない」「それはどういうこと?」「KKKみたいな差別運動している連中が今の日本にはうじゃうじゃいるってことだ」「なんてこった」「だからさ。ネットで中韓叩いて喜んでいる連中はあと数年で白いかぶり物で顔を隠して徒党を組んで襲撃を始めるぞ」「逮捕されちゃうよ」「大丈夫だ。政治家にも差別主義者は多い。彼らの影響圏内ではやりたい放題だろう」「それじゃ法治国家じゃ無いよ」「無論その通り。この映画でも【法律を決めても施行されない】と悩む大統領が出てくるわけで、結局は同じことだ。この映画は過去のアメリカを描いているが近未来の日本を描いているとも言える」



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