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2014-05-27(Tue)

上海の伯爵夫人/光りを失った男の純愛 その1

2005年 イギリス/アメリカ
上海の伯爵夫人日中戦争勃発1年前の中国、故郷の内戦により上海に亡命したロシアの「伯爵夫人」と、火災で妻と息子、更に事故で娘を亡くし、自身も失明した、かつては腕利きの外交官だった男のロマンス。歴史背景が色濃く再現され、その流れのなか消滅しつつある貴族たちの爵位の呼名が、儚く耳に残ります。 レイフ・ファインズは当然ですが、真田広之の演技に驚かされた作品でした。

[あらすじ]
男の名は「トッド・ジャクソン」、アメリカ人である。彼はある日、クラブで日本人「マツダ」と知り合った。ジャクソンは自分のバーを作りたいと考えており、クラブの話を始めると彼と意気投合した。外の世界から隔離された「夢のバー」だ。それに必要なのは、まずは理想的な女性だとマツダに語る。マツダが先に帰った後、盲目になってから、人の話し声がよく聞こえるようになっていた彼の耳に入ってきた会話のなかで、店内のホステスの中に、かつてロシアの「伯爵夫人」だった女性がいることを知る。彼女の名前は「ソフィア」。この当時、伯爵夫人のホステスなど、珍しいことでもなく、ジャクソンは彼女の存在を、特に気にもしなかった。
ソフィアの夫は既に他界しており、彼女は愛娘カティアと、夫の妹、義母と叔母夫婦と暮らしていた。当時、大勢のロシア人の貴族や官僚、資本家などのブルジョアジーが国外へ亡命し上海にも逃げてきたロシア人は多かった。ソフィアはホステスとして働き、一家の暮らしを支えていた。当時の上海にはかつて「伯爵」「伯爵夫人」と呼ばれていた貴族達が、中国人の下でみすぼらしく労働したり、女性ならばホステスとして生きていく事も止むを得ない事だった。しかし彼女の親族達は「貴族の肩書き」では食べていけないという事を全く判っておらず、ソフィアの事を「ふしだらな女」と辛くあたっていた。



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そんな彼女は店内で、盲目のジャクソンが、二人組みの悪党に狙われている事に気づく。彼女は彼が襲われないよう、それとなく自分のお客であるかのように腕を組んで店を出て行くことを促します。ジャクソンは自分の夢をかなえる、理想の女性だと直感し店をオープンさせる見込みをつけると、ソフィアが必要であると彼女をスカウトした。そして夢のバー「白い伯爵夫人」をオープンさせた。二人はその関係を仕事上だけと取り決め、お互いプライベートな事に触れることはなかった。こうして1年が経過した頃、上海を離れていたマツダが店に訪れた。

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バーは繁盛し、マツダにはジャクソンが理想としていた世界を作り上げたように見えた。しかしジャクソンは「政治的緊張感」が足りないと言う。店を出たマツダは最初は理解できなかったが、後にそれがどういうことか気づく。そして彼は再び店を訪れ、「共産党関係者」「国民党関係者」「中国軍人」「日本貨物船の船員と日本の実業家」彼らを店に呼び寄せることを手助けすると告げた。こうして最終的な店作りがマツダの協力によって実現した。まるで二人で模型都市でも作るかのように・・。ジャクソンは、外の世界ではバラバラの彼らを、店の中ではバランスよく配置した。ジャクソンは彼らを呼び寄せる事ができるマツダが、一体何者なのか問いかけたが、彼は、はっきりとは答えなかった。

ある日、ジャクソンが、カフェでラジオを聴いている横を、ソフィアと娘カティアが通りかかった。仕事以外では一切の関わりを絶っているソフィアは、そのまま通り過ぎようとしたが、カティアがこの盲目の男が、母親の勤務先のクラブの人だとわかってしまう。何故、母親が何も声を掛けず通り過ぎたのか理解できなかったが、彼女はジャクソンのところへ駆け寄り彼に懐いた。彼も亡くなった娘の姿を重ねた。

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カティアが言う「おじさん、ママと私を船で蘇州に連れてって」以前、他の子が蘇州へ船で行くのを見た彼女にとっての憧れの船の旅だ。

外の世界では、共産党と国民党の対立、日本軍の不穏な動きも強まっている。そんな世界を遮断したバーの中は、ジャクソンにとって理想世界だった。一方、マツダは、外の世界に、より大きなキャンパスを描いていたが、バーの中は、自分の責任を忘れ、語り合う充実した空間だった。そんなあるとき、かつて部下の息子でジャクソンを慕っていた青年が店に訪れた。このとき、彼からマツダが何者なのか聞いてしまう。その答えは明確な物ではなかったが、「マツダが現れた場所」は、その後日本軍がやって来て占領する・・・というものだった。

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あるとき、特権階級を忘れられない叔母夫婦は用もないのに領事館に行った。すると昔の教え子に偶然再会。それを切欠に香港行きを手配してもらうことが出来た。しかし金が要る。イギリス領である香港に行けば、安定した暮らしができると愚かな義母と義妹は思い込んでいた。ソフィアは義妹にお金が必要だと言われ、金を用意し義母に渡した。無論お金の出所はジャクソン。彼はソフィアの様子に気がつき、理由を言わなかった彼女にお金を渡したのです。ジャクソンはそれが渡航費用であり、お金を渡せば彼女は戻ってこないことも察知していた。さらに同時期に日中戦争が勃発。いずれにせよ上海を脱出しなければ危険な状態となる。しかし義母らは、ソフィアの旅券だけを買わなかった。彼女のクラブ勤めは伯爵家の汚点だから上流階級の人々に受け入れてもらえない。ソフィアは上海に残ること、それがカティアの将来の為と言われ、娘だけを連れて行かれた。見捨てられた彼女は娘との別れに悲しみ、部屋で泣き崩れていた。それを知った下の階に住んで親しくしていたユダヤ人のサミュエルは娘を取り返して、一緒にマカオへいこうとソフィアを説得した。こうして二人は港へ向かう。

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一方ジャクソンは混乱の中、店に行った。他のところにもう夢はない。そんな彼の前にマツダが現れる。マツダにとってもこのバーで過ごした、彼との時間はかけがえのないものであった。そして、この世界を理解していた唯一の人物である。しかし彼の、外の世界での、より大きなキャンパスは、「白い伯爵夫人」を消失させるものだった。マツダはジャクソンを安全な場所に連れ出そうとするが、ジャクソンは拒んだ。マツダは、店を去る前に、ジャクソンに「白い伯爵夫人」は命尽きるが、あなたは、別の世界を作るべきではと伝えた。そして、その伯爵夫人が数分前に港に向かっていたのを見かけたと伝えた。こうしてマツダはジャクソンに最後の道を示してバーを立ち去った。

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ジャクソンは、ひとつの望みを賭けて、手探りで港を目指し歩き出した。彼はその耳でカティアの居場所を探り、彼女を見つけ、ソフィアとも再会。マカオの船に乗り込んだのです。そして、彼は自分の望みを伝えます。今度は、契約でもなく、友情関係でもありません。混乱の最中、かけがえのないひとつの家族が生まれたのです。その様子は、いつか、カティアが港にあった箱の中で見た映像と同じ光景でした。

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とても良い脚本です。これを手がけたのは長崎県出身の日系イギリス人作家「カズオ・イシグロ」という方。日系人だった事でさらに驚きました。彼は小説では多くの賞を受賞していて、いくつかの作品が映画化されています。当作品は日本人の中国侵略時代が舞台なので、あまり日本人受けしないかもしれませんが、真田広之が演じるキーマン「マツダ」が、レイフのような一流俳優と肩を並べても、全く見劣りしない事が嬉しかったです。また、ナターシャ・リチャードソンの母親のような愛情を表した演技も合っていましたね。若くして亡くなられている事が寂しいですが・・。ところで、ソフィアを虐めた親族たちの末路はというと・・・実は、納得できるようにしてあります。ポルトガル領であったマカオは、この当時、戦禍に巻き込まれることはありませんでした。一方、ソフィアを見捨てた親族が向かった、イギリス領の香港は、この4年後に、日本軍がイギリス軍を放逐し占領します。唯一、ソフィアに優しかった、ボケてた叔母は早く老衰で亡くなっていればいいなと思いました。(フィクションなので、日本侵略前にお迎えがきたことにしましょう) 何故ならその後、「外国人収容所」「強制労働」という現実が待っているからです。


[監督]
ジェームズ・アイヴォリー
[出演]
トッド・ジャクソン          レイフ・ファインズ
ソフィア・ベリンスカヤ伯爵夫人 ナターシャ・リチャードソン (2009年3月18日/満45歳没)
マツダ                真田広之
グルシェンカ            マデリーン・ポッター
ピョートル・ベリンスキー公爵   ジョン・ウッド
ヴェラ・ベリンスカヤ公爵夫人  ヴァネッサ・レッドグレイヴ
オルガ・ベリンスカヤ        リン・レッドグレイヴ (2010年5月2日/満67歳没)
カティア・ベリンスカヤ       マデリーン・ダリー
サミュエル              アラン・コーディナー



★外部関連記事★

株式日記と経済展望/映画 『上海の伯爵夫人』 上海の夢が戦乱で泡と消える映画
それはそれとして、望外の喜びもあった。真田広之の堂々たる紳士振りだ。目を疑うほどに素晴らしい演技で、魅了させてくれた。なにしろ、あの、レイフ・ファインズに一歩も引けを取らず、それどころかファィンズを圧倒さえしていた。真田の秀逸な演技を観るだけでも充分な価値がある。真田の役どころは、上海で暗躍する謎の日本人だ。酒場で元外交官のレイフ・ファインズと語り合い、友情を深め、次第に盲目のレイフの心の中にまで忍び入り、やがてはレイフを翻弄するまでになる。この難しい役を、真田は見事なまでに演じ切った。映画を観る前までは正直なところ、これほど重要な役だとは想像だにしていなかったので、驚きと喜びが入り混じった視線で食い入るように眺めていた。レイフといえば、英国の中年紳士を演じさせれば右に出る者がいない、優雅な俳優だ。その男を相手に、真田は正々堂々互角に渡り合っているのだから、凄い。
 

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2014-05-25(Sun)

キャプテン・フィリップス/21世紀海賊の執着と逞しさ

2013年 アメリカ
キャプテン・フィリップ2009年にソマリア海域で実際に起きた人質事件がモチーフになっている作品。犯人は、いわゆる「現代の海賊」で、その多くはソマリア人。大昔の海賊と違うのは、物資を奪うのではなく、人質を取り、その保釈金を得ること。2000年頃から容易に、しかも成功率が高く、高額なお金を取れた事例ができてしまった為、海賊は数を増していた。この事件で人質として捕らえられた船長が題名の「キャプテンフィリップ」です。ソマリアの海賊たちは、まるで 鯨とりにでも行くかのように海岸から出発します。放水されても、船を揺らされても、恐ろしいほどの執着で船に乗り込み、船長だけが、人質となり救命艇の中に捉えられます。救出されるまで、彼らとのやり取りをリアルに再現。トム・ハンクスが主演なので、その演技も、期待通りです。表面的には緊迫感があり、それなりに楽しめますが、でも、それ以上に観た後にいろんな疑問が沸いてしまった作品。 私が思うに、これは、単なる伝記映画などではありません。

何故、彼らは海賊をするのか、
何故、犯人役に「痩せすぎの役者」を起用しているのか、
何故、犯人の少年の裸足を強く強調しているのか、
何故、メンバーの一人が身代金強奪に成功した事を告げた時に、
              「じゃあ金持ちだ」と言うと、男は黙りこんでしまったのか?

                       ・・・そして、奪った大金はどこへ行くのか?


犯人達の言葉の中で、聞き流してはいけないと思うセリフが多くあります。「海のプロ」であるはずの船長さえも、彼らの事を判っていませんでした。ソマリア人の彼らは「猟師」だという。船長が言う「魚をとって、普通に生活する。それじゃいけないのか?」犯人は「アメリカならな、・・・アメリカなら。」組織化している海賊グループ、危険を承知で実行するメンバーはきっと末端の人間なのだろう。船にあった3万ドルで彼らは手を打たなかった。たった4人の海賊、普通なら充分な金額なはず。組織への忠誠とか、組織からの圧力の強さを想像させる。犯人の一人の男が「アメリカに住んで車を買うんだ」と言った言葉が空しい。現実、単なる金儲けの為に海賊を行うというのも事実、貧困の為に海賊をするというのも事実だろう。これを観て、もしも疑問が残ったら、是非、その答えを探るべきだと考えました。

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この作品は、事件の背景に潜んでいることを教えてはくれないけれど、あえて「伝えたいことのヒントを」を残して作られていると思います。 単なる「船長救出大作戦」的な作品などではなく、間接的に、将来の地球に向けた、メッセージが込められているのではないでしょうか。

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最後に、救出されたフィリップが現実世界に戻れない時間がよく表現できていて、良かったです。やっぱ「トム・ハンクス」ですね。お見事。

キャプテン・フィリップス [DVD]

[監督]
ポール・グリーングラス
[出演]
リチャード・フィリップス   トム・ハンクス
アンドレア・フィリップス  キャサリン・キーナー
ムセ             バーカッド・アブディ
ビラル            バーカッド・アブディラマン
ナジェ            ファイサル・アメッド


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マスコミに載らない海外記事/なぜソマリア人海賊がいるのかを説明しない『キャプテン・フィリップス』
ソマリアを、沿岸警備隊を持つことができない破綻国家する上でのアメリカの役割への言及は皆無なのだ。その結果、漁業海域は、外国人による乱獲や、ヨーロッパ、アジアや、湾岸の企業による、ソマリア沿岸の海への毒物や放射性廃棄物廃棄によって壊滅されてしまったのだ。どこか他で廃棄物投棄をするには膨大な金額を払わなければならないはずの企業にとって、警備されていない海域は、無料ごみ捨て場だ。国連ソマリア特使のアフメド・ウルド-アブドゥラーは“ウラン放射性廃棄物がありました。鉛がありました。カドミウムや水銀等の重金属がありました。産業廃棄物、医療、化学廃棄物がありました”と語っている。彼は更に続けて言う。“放射性廃棄物はソマリア人を殺している可能性があり、海を完全に破壊しています。”20年間、飢餓、内戦、海洋の破壊が続いた後、漁民に残された選択肢はごくわずかだった。

2014-05-20(Tue)

プラトーン/正義と悪の不透明な境目

1986年 アメリカ
Platoon.jpgこの作品タイトルの「プラトーン」とは、軍隊の編成単位で30名~60名程で構成された小隊の呼称。アメリカとソ連の冷戦の代理戦争と言われたベトナム戦争を舞台として、実際にこの戦争に偵察隊員として出向き、その惨状を目の当たりにした監督オリバー・ストーンが、前線で戦う男達の姿を、架空の人物を用いて描いている。多くの賞を受賞し、反戦映画として代表的な一本です。

[あらすじ]
主人公のクリス・テイラーは恵まれた家庭の息子だった。彼は、底辺層の若者だけが職と金を求めて次々とアメリカ合衆国軍に徴兵していく社会に反発し、通っていた大学を中退しベトナム戦争に志願した。国の為と、理想を掲げ戦地に臨んだ彼は、カンボジア国境付近の、アメリカ陸軍第25歩兵師団に配属された。この時期のカンボジア国内の国境付近には、カンボジア国王のシアヌークが北ベトナム軍を駐在させていた。テイラーたちの敵は、このカンボジアに駐在している北ベトナム軍ということになる。当初、彼は戦地での経験で学ぶことが多いだろうと考えていたが、そんな志などあっというまに崩れ去ってしまう。想像を超える過酷さと、死への恐怖。彼もまた、他の兵士達と同様に次第に生き残ることだけに必死になっていく。勇敢に戦い国に帰還するという目的などもろくも崩れ去ってしまうのです。
そんな現実から逃避するかのように、兵士たちの間では、ドラッグが蔓延している。テイラーはそんな環境にも次第に慣れてゆく。さらに「プラトーン」(小隊)内は分裂していた。小隊長のバーンズと班長のエイリアスが対立し、ただならぬ気配であったのだ。ある日、北ベトナム人が逃げ込んだ近くの村の扱いをめぐり、その対立は決定的なものとなる。村の近くで仲間を殺され怒りに燃えるバーンズは無抵抗のベトナムの民間人を虐殺する。その虐殺を止めたエイリアス。

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また、その村にいた少女をレイプしようとした兵士達を止めたテイラー。上官は見て見ないフリ。この作品に登場する人物達は一見、善人と悪人がはっきりしているように見えます。エイリアスは、バーンズの虐殺行為を軍法会議にかけると告発の意思を示しますが・・。

悪い事など判りきっているバーンズの仲間達は彼をけしかける。「軍曹がなんとかしてくれるさ。」分裂状態の隊の士気など高まるはずもなく、さらに上官は正しい判断ができない。そして厄介ごとを排除したいバーンズは、人気のない場所でエイリアスと鉢合わせすると、彼を銃で撃つのです。その後、テイラーは森でバーンズに会うのですが、エイリアスは死んだと聞かされる。ヘリに乗りこんで間もなくすると、負傷したエイリアスが敵に追われ、ヘリコプターを追いかけてジャングルから走り出してくるのを目撃する。しかし、彼を助けることが出来ずエイリアスは力尽き、最後は天を仰ぎ大地に倒れこんだのです。この時テイラーはこれがバーンズの仕業であると確信しバーンズに強い殺意を抱く。エイリアスの死はテイラーを変えます。仲間を殺されて怒るバーンズと同じように。その後の戦闘の最中、テイラーはバーンズに殺されそうになるのですが、「判断力が欠落し自分だけ穴ぐらに隠れている愚かな上官」の空爆命令により、仲間が戦っている頭上に爆弾が落とされるのです。幸いにも、バーンズに殺される寸前だったテイラーは、これで命拾いをしたわけですが・・・。その後テイラーは一線を超える。この「一線」はバーンズもかつて超えた一線だったはず。物語の最後、バーンズは死に、ティラーは移送されるヘリの中で、この体験から、これから自分に何ができるかを考えるのです。

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[あとがき]
見終えて思ったことは、バーンズを一言で「悪」と決め付けることはできないということ。仲間の死に怒る彼の表情、爆薬を受けた仲間の体から噴出する無数の弾を何とかしようと、衛生兵と叫びながら素手で弾を取り出そうとする姿。どうにもならないのに。この作品は、彼をただの悪人としてはいないところがポイントとなっている気がします。両手を挙げて天を仰ぐ、エイリアスの最期にも匹敵します。戦争が彼を変えてしまった。「邪魔するものは仲間でも殺す」そんなバーンズの最期は堂々としたものだった。彼は隊を統率し引っ張ってきた。任期を終えることを心待ちにしているほかの兵士の中において、本気で戦った彼は戦争によって自身の中の多くのものを「捨ててきた」のだろう。そんな姿が、もの悲しく映った。

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戦争から生き残り帰還したテイラーはエイリアスでもありバーンズでもあります。そしてテイラーはそれを自覚しています。彼らの敵は北ベトナム軍だけではなかった。 戦地において、心を病ませる本当の敵は軍の内部にあり、それに流されてしまう、あるいは見失ってしまう自分自身だと伝えている。 テイラーは「反戦運動に繋がる行動」を観客に示し、物語は静かに幕を閉じます。最後のテイラーのセリフは、当時のベトナムの地を去る時のオリバー・ストーンの思いそのものだったのでしょう。きっと自分自身を重ねていたのだろうと感じます。

プラトーン〈特別編〉 [DVD]

[監督]
オリバー・ストーン

[出演] 
クリス・テイラーチャーリー・シーン
バーンズ2等軍曹トム・ベレンジャー
エイリアス3等軍曹 ウィレム・デフォー
バニーケヴィン・ディロン
ハロルドフォレスト・ウィテカー
レッド・オニールジョン・C・マッギンリー
ラーフランチェスコ・クイン
ハリス大尉 デイル・ダイ
キングキース・デイヴィッド
フランシスコーリー・グローヴァー
ウォルフ中尉マーク・モーゼス
ウォーレントニー・トッド
ジュニアレジー・ジョンソン
ガードナーボブ・オーウィグ
ガーター・ラーナージョニー・デップ
  検索用/チャーリー・シーン/トム・ベレンジャー/ウィレム・デフォー/ケヴィン・ディロン/フォレスト・ウィテカー
★受賞★
[第59回アカデミー賞]  作品賞、監督賞、編集賞、録音賞
[第44回ゴールデングローブ賞]  ドラマ部門作品賞受賞/監督賞/助演男優賞(ベレンジャー)
[第41回 英国アカデミー賞] 監督賞、脚本賞
[第2回 インディペンデント・スピリット賞]監督賞、脚本賞



ベトナム戦争(資本主義VS.共産主義の対立)
ベトナムの独立と統一をめぐる戦争。ホー・チ・ミンが建国した社会主義のベトナム民主共和国(北ベトナム)と、これを認めないアメリカなどの資本主義国がベトナム南部にベトナム共和国(南ベトナム)を作り、北ベトナム側にはソ連・中国などの共産主義陣営が支援、南ベトナム政府側にはアメリカなどの資本主義陣営がそれぞれ支援し、1960年前後から1975年まで続いた戦い。アメリカでは徐々にその犠牲の大きさから、ベトナム反戦運動が活発化する。アメリカ政府は撤退を決定し、1973年に撤兵が完了した。その後、1975年にサイゴンが陥落して南ベトナムが敗戦。翌年に南北が統一された。



◆内部関連記事◆

アメリカ軍撤退後に起きた隣国「カンボジアの悲劇」→キリング・フィールド

★外部関連記事★

マスコミに載らない海外記事/もうひとつのアメリカ史”: オリバー・ストーンとオバマとベトナム戦争
主としてベトナム戦争を扱うエピソード7では、画面に釘付けにされてしまった。ストーンは、戦争を生々しく描き出して、ベトナムで兵士だったことで彼が感じていた罪悪感を償っている。・・息子がミライに行った母親が、あるジャーナリストに言った言葉。“私は軍に良い子を渡したのですが、軍は人殺しを返してくれました。”だがアメリカ国内で何が起きようとも、ベトナムで起きたことには到底かなわない。お互いさま等とというもの等全く存在せず、そういうものがあったと発言するのは非常識だ。アメリカ合州国がベトナムやカンボジアやラオスで行なったことは、20世紀における最悪の残虐行為に比肩する。

2014-05-03(Sat)

オネーギンの恋文/弄びの応報

1999年 イギリス
オネーギンの恋文彼には時間が必要だった。
事件は二人の間を引き裂き、永遠に結ばれることのない場所へと運んでいく。

1800年代初頭に生きたロシアの作家、「アレクサンドル・プーシキン」の小説、『エヴゲニー・オネーギン』が原作。レイフ・ファインズが主演し、彼の妹が監督、弟が音楽を担当し話題になった。不羈奔放の生き方を好み、他人の心を弄ぶ悪癖の為に、大切な友と心の奥では、本当は愛していた女性を失ってしまった男の愚かさを描いている。そして、女性の貞操がテーマになっている作品です。

ペテルブルグで享楽的で自堕落な生活をしていた男、エフゲーニ・オネーギン。彼は貧乏貴族であったが、田舎にいる叔父が亡くなり莫大な財産を受けついた。その屋敷に滞在中、森で出くわした男ウラジーミルと知り合う。オネーギンは彼を大層気に入り程なく友人となった。当初、オネーギンは受け継いだ田舎の土地を農奴制にし、さっさと都会に戻るつもりだった。 しかしウラジーミルと過ごす事が多くなり、なかなか戻らないでいた。そのウラジーミルの恋人はオルガ。 その姉が、もう一人の主役であるタチアナ。彼女は叔父の代からよく屋敷に本を借りに来ており、最初に彼女が屋敷に本を返しに来ていたときから、オネーギンはタチアナが気になっていた。彼女は農奴制に共感できない先進的な考えの持ち主の女性ではあったが、それでもオネーギンを一目見たときから心を奪われてしまう。そんな頃、ウラジーミルと何時も一緒にいるオネーギンは、ある日彼に、オルガよりタチアナのほうがいいと言ってウラジーミルを不快にさせた。

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自分の心に正直なタチアナは、自分の恋心を抑えることができずオネーギンに恋文を送った。しかしオネーギンは、率直な彼女の想いを受け入れることなどできず、彼女の申し出を断る。しかし、本心ではタチアナの事が気になっているため、なんとも中途半端な言葉で彼女を遠ざけます。「自分は結婚には向いていない、浮気はする、責任を負いたくない、そんな未来を君は望むのか?」と。この日はパーティーだったが、彼女を振ったそのすぐ後で、彼はオルガとダンスを踊った。ウラジーミルはオルガと次のダンスの約束をしていたというと、オルガはオネーギンともう一曲踊るという。嫉妬し怒りを抑える事ができないウラジミールはオネーギンに「オルガを誘惑するつもりか!」と言ったが、当然、彼にはそんなつもりはもうとうない。実に、このダンスはタチアナに見せ付ける目的の為だったのだから。悲しげな表情のタチアナをよそに、さらに、オネーギンはオルガがその間に、次の男と踊っているのを指し「ほらね、彼女は尻軽だ」とウラジミールに見せ付けた。
オネーギンの人の心を弄ぶ、このような悪戯が、後に彼を永遠に消えない後悔へと導いていくことになります。

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後日後、ウラジーミルはオネーギンに決闘を申し込んだ。彼は愛する女性を屈辱したオネーギンを許すことなどできなかった。事の深刻さを理解できていないオネーギンは、和解できると「甘い考え」をしていたが無駄だった。結果、決闘を避けることが出来ず、オネーギンの銃弾によりウラジーミルは命を落とす。オネーギンは彼を抱きかかえ泣いた。そしてタチアナたちの前から姿を消してしまう。

主人が不在になった屋敷で、タチアナはオネーギンが書いた自分によく似た女性の絵を見つける
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やがてオルガは別の男性と結婚。一方、タチアナは,愛する人と会えるまで結婚はしないと言っていた。そんな彼女に、彼女のおばあちゃんはいいます。恋愛がしたければ、結婚後に愛人を作ればよいと。この時代を象徴しているようなセリフです。恋をしないまま嫁いでいく娘達に、親や祖母たちは(密かに)こう言い聞かせてきたのでしょう。タチアナは言います。「結婚したら貞節を守ります。」しかし人生は残酷。当時の女性にとって適齢期に結婚できなければ果てはオールドミスか高級娼婦。タチアナは社交界にお披露目される事になります。

そして6年後、ペテルブルグの社交場でオネーギンは姿を見せた。そこで、タチアナと再会する。彼女は自分の従兄弟の妻となっていた。 自分の間違いを自覚し戻った彼の前に、出会った当時より洗練された姿のタチアナ。恋心を抱きながらも、性格の悪さから一度は彼女を拒絶したのにも関わらず、今度は人の妻となった今になって、彼女の愛を欲した。オネーギンはタチアナに手紙を書いて送ります。自分が間違っていたこと。彼女を本当は愛していたこと。しかし、このオネーギンの手紙を受け取ったタチアナは読むとその場ですぐに燃やしました。

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タチアナが手の届かないところにいってしまってから、ようやく目が覚めたオネーギン。彼が放浪の旅に出ていた6年間、何故、彼女の手紙を捨てずに持っていたのか。そしてペテルブルグでは、何故、荷解きをしていなかったのか。それは、彼が帰ろうとしていたところは、かつてタチアナがいた場所、田舎の屋敷だったから。このペテルブルグにタチアナがいることを知り、オネーギンは使用人に荷解きをさせた。そして手紙の返事を待った。けれど返事など届くはずもなく、とうとう彼はタチアナに会いたくて彼女の館を訪ね愛を告げた。しかし彼女は夫を裏切るつもりはないとはっきり意思を伝えた。このときタチアナは、今でもオネーギンを愛していると本心を明かしたが、結局のところ、数々の既婚女性を誘惑し一線を越えてきていた彼の「甘い常識」は、はかなくもタチアナの「信念の強さ」には勝てないのです。後悔に苛まれるオネーギンは、きっとこれからもずっとタチアナの手紙を捨てられない。そして彼は、この先も来るはずのない手紙を待ち続けるのです。

オネーギンの恋文 [DVD]

[監督]
マーサ・ファインズ
[出演]
エヴゲニー・オネーギン   レイフ・ファインズ
タチャーナ           リヴ・タイラー
ヴラディミール・レンスキー  トビー・スティーブンス
ニコライエフ公爵       マーティン・ドノヴァン
オルガ             レナ・ヘディ




決闘で死んだこの小説の作者のアレクサンドル・プーシキン

1799年から1837年にロシア帝国で生きた詩人、小説家。ロシア近代文学の嚆矢と言われている。地主貴族の息子として生まれ、母親側の祖父は、アフリカから連れてこられた黒人奴隷上がりのエリート軍人で歴史上に名を残した「アブラム・ガンニバル」である。プーシキンは子供の頃から詩人の叔父の影響で、文学に親しみながら成長していった。20歳になった頃には、その才能が文学界に広く知られるところとなった。その後、次第に政治色を帯びた詩を発表するようになり、当時の政府により、別の地域へ送られたり、作品の発表を禁止されたり、政府の監視で活動を押さえつけられたりと、窮屈な生活を余儀なくされていた。1830年、韻文小説『エヴゲーニイ・オネーギン』を完成させると、翌年の1831年にナターリア・ゴンチャロワと結婚。彼女のその美貌は当時モスクワ中に知られていた。二人は4人の子供を授かったが、そのうちの一人の娘「アルトゥング、マリア」の容姿が、同じ時期にロシア帝国にいたレフ・トルストイの作品の「アンナ・カレーニナ」のアンナのモデルとなっているといわれている。1835年、ナターリアはフランスから移住してきた美男子で放蕩者の「ジョルジュ・ダンテス」と知り合うと、ダンテスはナターリアに言い寄るようになる。1837年にダンテスは、ナターリアの姉エカテリーナと結婚したが、その後もナターリアに言い寄り続け、終に業を煮やしたプーシキンは決闘を申し込んだ。その結果、ダンテスの撃った弾を右腹部に受けて倒れ、その2日後に息を引きとった。偶然とは思えない彼の運命。『エヴゲニー・オネーギン』はプーシキンの未来を予見していたような、数奇な運命を感じる作品です。

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アレクサンドル・プーシキン            ナターリア                         アルトゥング、マリア

◆内部関連記事◆

同時代のロシア帝国の貴族社会/生き方は異なるけれど・・アルトゥング、マリアがモデルの→アンナ・カレーニナ


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ein journal/ベルリンのこと by オーレンカ/オネーギンの恋文
なぜ原題は《オネーギン》なのに邦題が《オネーギンの恋文》なんだろう、と思いながら見ました。最後に、かつてふった女性に改心(?)したオネーギンが恋文を書くという脚色が行われています。オネーギンと再会し、すでに既婚者となった彼女の心が乱れ、夜な夜な苦しんで、その苦しさを追い払うべく夫に抱きつく場面など、女心をすごく繊細に、嫌みのない美しさで描いているなぁと思ったら、監督が女性(主役レイフ・ファインズの妹マーサ)なのですね。これで納得しました。



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