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2015-07-22(Wed)

悪女 Vanity Fair/原作と違うレベッカ

2004年 イギリス
悪女Vanity Fair1810年代の小説家「ウィリアム・メイクピース・サッカレー」の出世作、「虚栄の市」が原作となっている。同時代のイギリスが舞台で、フランスでは「ナポレオン」が衰退をはじめる頃です。邦題の「悪女」とされるこの作品の「レベッカ(ベッキー)・シャープ」は、社交的でチャーミング。強くて前向きで友人思いです。恵まれずに育った彼女は持ち前の才気で上流社会に入り込もうとしますが、それを阻もうとする上流階級者、爵位に固執する者達など、中身のない上流社会の滑稽さと、ベッキーとは対照的な親友、アミーリアにもスポットをあてて描いている作品です。

[あらすじ]
オペラ歌手であった母と画家であった父を幼い頃に亡くし、孤児となったベッキーは、女学校に引き取られ住み込みで働きながら成長した。一人で生きていける年齢になると女学生の中で、唯一彼女に優しかった友人、上流階級育ちのアミーリア・セドリーが卒業するときに、彼女と一緒に学園を後にします。ベッキーは男爵クローリー家の家庭教師として働くことが決まっていたが、その前にアミーリアの実家セドリー家に少しの間だけ滞在することに。ベッキーはここで、アミーリアのフィアンセのジョージと兄のジョスを紹介された。アミーリアは兄のジョスとベッキーが恋仲になって「結婚して欲しい」と期待したが、ジョージは家庭教師などと親戚になりたくないとジョスに横槍を入れた。ジョージは商人として成功した父を持ち裕福ではあったが、爵位が欲しかったので家庭教師が義理の姉になるなど真っ平だったのです。そそのかされたジェスはベッキーを置いてその場から消えてしまいます。振られたベッキーでしたが、決して悲観などしません、常に明るく前向きです。 今までのお礼にと、アミーリアに、大切な父の形見の小さな絵画をプレゼントして、仕事先のクローリー家に向かいます。

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クローリー家は爵位はあったが、さほど裕福ではなかった。クローリー氏の姉(叔母)のほうが資産家だった為、一家は、彼女の遺産を当てにしていたのです。ある日、その叔母がやってきたのですが、話術に長けたベッキーは直ぐに気に入られた。さらに、クローリー家の次男のロードンと密かに結婚。しかし爵位も財産もないベッキーとの結婚が公になると、一族から反発され、ロードンを相続人から廃除してしまう。ベッキーは追い出され、ロードンも屋敷を出て、二人は一緒に暮らし始めます。けれど無一文で毎日の暮らしにも事欠く始末。運がないというだけの夫の傍でベッキーはこの窮地を乗り切るためと、社交界へ乗り出すことを決める。

一方、アミーリアは、家が破産。セドリー家の家財が競売されているその場所には、ジョージの親友のドビンがいた。彼はアミーリアのピアノを落札します。ベッキーがアミーリアにプレゼントした、父の形見の絵画も競売品となっていた。ベッキーはそれを買い戻そうとしたが、父が生きていた頃から父の絵を買い集めていたスタイン侯爵が高値をつけたため手に入れることができなかった。ドビンが落札したピアノは、アミーリアのところに届けられたが、アミーリアはそれがジョージからのプレゼントだと泣いて喜ぶ姿を見てドビンは何も言えなくなってしまう。そしてその頃、ジョージの父は無一文になったアミーリアは用なしと、二人の婚約を解消しようとしていた。そしてジョージもアミーリアに興味はなく、父から妹の友人を紹介されると、乗り気で会ってみるも、相手は裕福ではあるがアジア人だったことから、爵位に拘るジョージは、父親と決別し家を出て行く。そして父親に反発して、アミーリアと結婚してしまうのです。彼女に対する愛情などこれぽっちもないままに。

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いつもジョージの保護者のようにくっついているドビン、    アミーリア放置でベッキーを口説くジョージ。夫の頭上で恋文まで渡しちゃいます。

リッチモンド公爵夫人の舞踏会でナポレオン軍来襲の急報が届き、軍人たちにいよいよ出兵が発令される。
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ジョージはアミーリアに何も言わずに戦地に行ってしまう。            ロードンはベッキーに出来るだけのものを置いていきます。

ある日、戦いは不利で町に敵がなだれ込んでくると噂になった。町中の人たちが逃げ出しているときに、町を歩く兵士の行列の中に、アミーリアが、ジョージを探して彷徨っていた。他の貴族の馬車に乗って逃げ出せたベッキーだったが、アミーリアを見捨てることができずに、彼女と一緒に町に残ることを決めるのだった。二人はこの時、夫々身重の体で恐怖を押し殺しながら過ごす。幸いにも戦いはイギリスが勝利し二人とも何事もなく無事に乗り切った。勝利を喜んだのもつかの間、ドビンとロードンは帰還したが、ジョージは戦死。深い悲しみにくれるアミーリア。そして息子の死を悲しむ父親の元には、生前のジョージからの手紙が渡された。けれどアミーリアの元には、一言の伝言さえありませんでした。 それでも、アミーリアの、ジョージへの想いは、この先十数年も続くのです。

ベッキーとアミーリアは男の子を出産。アミーリアはわが子に父親の名前をつけて、その子だけを生きがいとして暮らします。母子を見守るドビンは、インドへ派遣された事を彼女に伝えます。アミーリアに想いを寄せているドビンは、僅かな望みをかけて彼女に「あなたが、行くなと止めてくれれば。」と。けれど無駄に終わります。そして彼はインドへ。数年後、成長していくジョージは父親によく似てきます。けれど満足な教育も、生活もさせてあげられない孫を、アミーリアの母は不憫だと言うのです。アミーリアは、以前からのジョージの父親オズボーンからの提案を、泣く泣く呑んでジョージを手放しました。こうして離れ離れになった親子。アミーリアはドビンに手紙を書きます。「ジョージは元気です・・・・・。」

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週に1度は会えるのですが、アミーリアは寂しそう。そんな母の気持ちを知るはずもなく、ジョージは寂しがるどころか、こにくら可愛い、このセリフ

インドにて、アミーリアとジョージを想いながら手紙を書くドビン。彼は現実を見据えて、他の女性と婚約をしていたのですが、ドビンの婚約の話を知ったアミーリアは「ショックを受けた」とドビンへの手紙に書いたため、ドビンは婚約を破棄しアミーリアの元に戻ってきてしまう。けれどその後も、二人の間は進展はしません。お嬢様なので、ちっともわかっちゃいないのか、気がつかないフリをしているのか・・気の毒なドビン。

クローリー家では叔母が長男に財産を残し、次いで父親も長男に財産を譲り亡くなります。ベッキーを妻にしたロードンには、僅かな財産も与えられません。ベッキーは父の絵を買い集めていた、スタイン侯爵とひょんなことから知り合うと、彼の後押しで、上流階級の仲間入りを果そうとします。そして、時の国王ジョージ4世との謁見まで果すのでした。夫のロードンはこの様子を複雑な面持ちで見つめます。その後もベッキーとスタイン侯爵とのやり取りを聞いて、ロードンは不安気です。この日、ロードンはベッキーより先に帰るのですが、その途中で借金取りに捕まり投獄。ベッキーに手紙を書いたが、迎えに来たのは兄嫁のジェーンでした。

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ベッキーは、スタイン侯爵に自宅に送ってもらったが、届いた手紙から夫が帰宅できないことを知ったスケベ侯爵に求められ拒否するも、そこに夫が帰ってくるというお決まりの展開。ロードンは、スタイン侯爵に暴力を振るい追い出します。そして自宅に大金がある事に腹を立て、ベッキーを信じることができなくなり、出て行ってしまいます。数日後、侯爵の陰謀により、ロードンは島流し。後に、彼はその土地で病気により亡くなります。

ロードンと別れてから12年後。ベッキーはドイツの賭博場にいます。そこに、まだ幼さの残る一人の軍人がやってきます。一言二言、言葉を交わすと、その後ろにはドビンが。この軍人はアミーリアの子ジョージだった。アミーリアは今では亡くなったジョージの父親から遺産を譲り受け、貧しい生活から抜け出していた。そして、今はアミーリアとドビンとジョージの三人で旅行中だという。未だ二人が「お友達」と知るベッキー。ジョージは、宿泊先のホテルにいる母に会いに来てくださいと伝えます。ホテルに戻ったドビンは、ベッキーの事とこの状態に限界だったのか、再びアミーリアの元を去ろうとします。アミーリアは彼を止めません。未だ、彼女の恋人は亡きジョージなのです。翌日ベッキーはアミーリアと久しぶりの再開。ベッキーは自分と同じ過ちをして欲しくないと、あの日のジョージの恋文を読み上げるのです。傷つきながらも、やっと目が覚めたアミーリア。

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やっぱりジョージの保護者みたいにくっついているドビン。ドビンはもう荷物を馬車に乗せて出発の準備中。    良かったねぇドビン。

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    揉み上げ長めの前流しレイヤー。この時代の多くの肖像画に描かれている人物の髪型ってこんな感じが多い。流行だったんですね。

[あとがき]
最初にこの作品を見たとき、何故、映画の邦題が「悪女」なのか理解ができませんでした。なぜなら、主役のベッキーは、悪女とは程遠い女性として描かれているからです。どうもしっくりこないので原作の内容を調べたら、納得。原作では裏の顔を持つとんでもない悪女でした。彼女を悪女とは印象付けない脚色をしているにも関わらず、それにあわせたストーリ組みをしていないため、多くのシーンで、お話がかみ合っていない印象を受けます。ジョージがアミーリアをなんとも思っていないのに、突然結婚したことが不自然でしたが、これはアミーリアを想うドビンの説得によるものだという、肝心なことをすっ飛ばしているし、原作では、ベッキーは実はアミーリアを裏切り、ジョージと浮気をしていて、それを知っているドビンは、彼女を当然に嫌うわけですが、映画ではそんな事をしていないベッキーを、何の理由もなく嫌っていることにしているのも変ですし、財産を相続できなかったロードンは、映画中では、一切援助がなく、貧乏暮らしをしているとなっているのが、実は優しい兄夫婦から援助してもらっていて、そこそこ贅沢な生活をし、ベッキーが家庭を顧みず舞踏会に足を運び贅沢をしているから貧乏ということらしいです。スタイン侯爵にも自分から近づいていっているようですしね。映画の人格に、原作の結果をそのままくっつけているような訳の判らない出来です。邦題にしても、原作に「悪女」は正解だと思うけど、映画のほうで悪女なんて、「作品を観ないで邦題決めてるのかしら?」と思ってしまいました。とはいえ、悪女のベッキーは、一癖も二癖もありながら、憎みきれないキャラの女性のようで、きっと原作どおりに作ったほうが、面白い作品になったのではないだろうかと思いました。ちなみに、ベッキーの性格で、原作と映画で共通していたのは、子供に興味がないという点ぐらいでした。映画は最後は明るいシーンで終わりますが、原作には続きがあって、ベッキーはジョスさんと一緒になって、彼の財産を食いつぶしたのち、彼の死亡保険金を手にするという内容のようです。小説にもあまり興味がわきませんけど、ただひとつ、この映画のいいところは、男性陣の魅力的な軍服ファッションスタイルです。これだけ綺麗に撮られているのって、実はありそうで、あまり無いのではないでしょうか。(3人とも細身でスタイルがいいのでそう見えるのかもしれませんが)

悪女 Vanity Fair (字幕版)


[監督]
ミーラー・ナーイル
[出演]
ベッキー・シャープリース・ウィザースプーン
ステイン侯爵ガブリエル・バーン
ウィリアム・ドビン リス・エヴァンス
ジョージ・オズボーン ジョナサン・リースマイヤーズ
オズボーン氏 ジム・ブロードベント
アミーリア・セドリロモーラ・ガライ
ピット・クローリー卿ボブ・ホスキンス
マチルダ・クローリーアイリーン・アトキンス
ロードン・クローリージェームズ・ピュアフォイ
サウスダウン伯爵夫人 ジェラルディン・マクイーワン
ジョージー・オズボーン(ジョージの息子) トム・スターリッジ
[検索用]リース・ウィザースプーン/ガブリエル・バーン/リス・エヴァンス/ジョナサン・リースマイヤーズ/ジム・ブロードベント/ロモーラ・ガライ/ボブ・ホスキンス/アイリーン・アトキンス/ジェラルディン・マクイーワン/ トム・スターリッジ


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ワーテルローの会戦/Jan Willem Pieneman, 1824

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ナポレオン戦争 軍服図鑑/イギリス軍 軍服図鑑/戦列歩兵
ナポレオン戦争中にイギリス軍は20万の陸軍を編成しますが、実際にナポレオン軍と戦ったのは半島戦争における4万規模のイギリス軍のみでした。彼らは少数ながら、現地のフンタ(義勇軍)と協力してフランス軍をスペインから駆逐します。しかし、フランス軍と戦ったイギリス軍でさえ、必ずしも現地の民衆に歓迎しされたわけではありませんでした。


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2014-10-08(Wed)

アリス・イン・ワンダーランド/ファンタジーキャラクターの名優

2010年 アメリカ
アリス・イン・ワンダーランド「不思議の国のアリス」の冒険の13年後が舞台のファンタジー映画。物語的には当然、アリスが主役なのだけど、主役より際立つのは不思議世界の住人、帽子屋さん「マッドハッター」。 主役食ってま~す。 だって、ジョニーだもの。 それでも、どうにかこうにか、困った顔のカワイさでがんばるアリスは、今日も眉毛が「ハ」の字形~♪。 ワシコウスカだから・・。

時は多分1900年前後。19歳になったアリスは、幼い頃の冒険は記憶に残ってはいるものの、今では夢の中の出来事だと思い込んでいます。そんな彼女の実業家であった父は亡くなり、会社は父の友人に買いとられます。残された母と姉の女所帯では会社の運営は不可能だったからです。そしてある日、アリスは母に促されあるパーティへ出向きます。しかし彼女は知りません。そのパーティは会社を買い取ったその友人の息子と彼女を婚約をさせる為に開かれたものであることを。相手は貴族でもあり、家の存続の為とはいえ、アリスは何も聞かされないまま御曹司にプロポーズをされるのです。仕組まれていた事に気づいた彼女は、考えるまもなく周囲の期待の眼差しに答えを出さなければならない状況に追い込まれ、思わずその場から逃げてしまいます。そして、このパーティ会場に来ていたときから、彼女の目の前に見え隠れしていた洋服を着たウサギの姿を追って、彼女は再び不思議世界へ。

実は洋服を着た白うさぎは13年前と同様、現実世界にやってきて、必死にアリスを探し出し、彼女は呼び寄せられたのです。何故か?不思議世界が大変な事になっていたから。こうしてアリスはかつての仲間達と再会。彼らはいつものとおり終わることのないお茶会を開いていた。


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帽子屋のマッドハッター大喜び。          アリスを探しにきた赤の女王の手下。      小さくなったり大きくなったり。

アリスはこのお茶会の場にたどり着く前に、芋虫のアブソレムや双子達、チェシャ猫達とも再会しています。不思議の国は赤の女王が抑圧支配する世界となっており、預言書によれば、アリスはフラブジャスの日に伝説の「ヴォーバルの剣」で、怪物ジャバウォッキーを退治し、赤の女王の支配から開放する「救世主」であると知らされますが、彼女は、ここが自分の夢の中だと思っています。

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白の女王のところへ連れて行こうとしますが  マッドハッターは捕まりアリスは彼を助けに行くと言い出します。 ケーキを食べ過ぎで・・。

赤の女王の城の庭で、大きくなりすぎたアリスは女王の同情を買い城に入り込むことに成功。頭が大きく、コンプレックスの塊の女王の取り巻きは、これまた普通じゃない容姿ばかりの人達。アリスは赤の女王に赤い素敵なデザインのドレスを作ってもらいます。

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アリスが赤の女王のところに行った事を報告   白の女王、彼女は赤の女王の妹です。     父親に・・なんだかかわいそうな赤の女王

しかし、程なく彼女がアリスだとばれてしまいます。アリスは伝説の「ヴォ-バルの剣」を奪い、仲良くなった猛獣バンダースナッチと共に城を脱出する。追って、マッドハッターと拘束されていたワンコの家族たちと双子達もみんな無事に脱出。白の女王の城に結集した。

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現実世界のあの光景と同じ       アリスはここが自分の夢の中ではないことをやっと知る。 「生まれ変わる」と彼女に別れを告げ

フラブジャスの日が迫る。アリスはここでも、現実世界と同様に大勢の目の前で二者択一の選択を迫られる。しかし、彼女はまたしてもその場から逃げ出してしまうのです。城のバルコニーで平常心でいられない彼女の前に、蛹になりつつあるアブソレムが。彼に自分が誰かわらかない愚か者と言われると、アリスは、それに対し反論する。自分が何者かなど知っていると。家族と、先見の目と豊かな想像力のある父親の事を。そして自分は、「彼の娘」であることを。自身が発した言葉でようやく気がつくアリス。彼女の心は決まる。

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可能だと信じなければ何事も実現しないという父を想い剣を取る。    これは「6つめのありえないこと」。

戦いに勝利したアリスは、この不思議世界の出来事の教訓を得て、現実世界で自分が行うべきことを見出すのです。それは、この時代の常識では考えられなかった「7つめの"ありないこと"」。形式に囚われず、自分の意思を尊重し、そして現状を変えていく勇気。
・・・・・・・・・それを遣り残している事に気がついた彼女は現実世界に戻らなくてはなりません・・・・・・・

「ここにいなよ。」とさみしそうに言うマッド。アリスは「またすぐに来るわ」
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現実世界に戻り、自分の行く道を決めたアリスの目の前に、蝶に生まれ変わったアブソレムが・・・・・。


[あとがき]
社会的自立をテーマにした、想像に反した内容の濃い作品でした。不思議世界の中では、コンプレックスにより歪んだ性格の赤の女王は、最後は潔く、多くを求めず、観ている側に、ただの悪人だという印象を与えないようにしている感じがします。「私は姉!」のセリフを吐かせることにも不思議な感じを受けた人も多いはず。本来なら姉が正当な王位継承者というのが筋。この姉妹、何かありそうだという感じをあえて残し、本編は完了している。続編があればいいのにと思っていたら、今年8月から続編の撮影が開始されていました。次はきっと、二人の女王が和解する第3の物語かもしれません。(完結するのであればの話ですが・・)もしかしたら赤の女王の頭は普通サイズにもどるのかも?。良いものが出来そうな感じがしますね。そして、登場キャラの中では、やっぱりマッドが群をぬいて強烈。ジョニーはキャラクターの個性を演じる前から確立できているんですね。その優れた想像力にはいつも感心させられます。海賊のジャックじゃないし、チョコレート工場のウィリーでも、はさみ人間のシザーでもない。彼らとは全く異なる性格のマッド。彼は水銀中毒?で、頭の中が変だけど、感情の出し方が最高に魅力的な素敵キャラなのです。

アリス・イン・ワンダーランド [DVD]

[監督]
ティム・バートン
[出演]
マッドハッタージョニー・デップ
アリス・キングスレーミア・ワシコウスカ
赤の女王ヘレナ・ボナム=カーター
白の女王アン・ハサウェイ
ハートのジャッククリスピン・グローヴァー
トウィードルダムマット・ルーカス
[検索用]ジョニー・デップ/ミア・ワシコウスカ/ヘレナ・ボナム=カーター/アン・ハサウェイ


[帽子屋の水銀中毒]
「帽子屋のように気が狂っている」とは、当時よく知られていた英語の慣用句である。1800年代半ばの実際の帽子屋は、帽子のフェルトの製造過程で使われる水銀(フェルト地を硬くするために使われていた)により、しばしば本当に気が狂ったという。不思議の国のアリスに出てくる帽子屋は、この慣用表現をもとに作られたキャラクターである。また、実際のモデルとなったのは、当時、奇人として知られていたクライスト・チャーチの用務員「セオフィラス・カーター」という人物で、彼はどんな天候のときにもシルクハットを被っていたことで「狂った帽子屋」として知られていた。また、彼は発明家でもあり、起床時間になると跳ね上がって眠っている人を放り出すベッドというような変な発明をし、1851年のロンドン万国博覧会でも展示されたという。発想が滑稽でユニークな人物がモデルだったんですね。




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妄想レポ倉庫/映画感想 『アリス・イン・ワンダーランド』
■CMでは出陣シーンで「なんで私が?」と武装したアリスが独白してましたが、映画では違ってました。この段階で彼女はちゃんと自発的に戦いに赴く決意をしています!。「なんで私?」て思ってたらあんな死闘勘弁です。そして白の女王の「自分は戦いませんv、宗教上の理由でv」的な言い訳? がすごい。この人あんま何もしてないような。でもマンセー。



2014-08-07(Thu)

アナと雪の女王/姉妹の絆を描いたミュージカル アニメ

2014年 アメリカ
アナと雪の女王アカデミー長編アニメ映画賞受賞作品。ミュージカルです。日本での興行収入、観客動員数はいずれも歴代上位を記録。映像の遠近感に加えて、人物の特徴を表現した動作や、二人の髪のなびきとアナのスカートのゆれに特に視線が釘付けになりました。最新技術を駆使し進化した映像はアニメの域を超えているとも感じられる作品です。

作品の主役はアレンデール王国の二人の王女。姉は触れたものを凍らせたり雪や氷を作る魔法の力を持って生まれたエルサ。普通の少女である妹のアナ。ある夜、幼い二人はエルサの魔法で遊んでいたが、はしゃぎすぎて高所から落ちそうになったアナを助けようと、エルサは誤って魔法をアナの頭に当ててしまいます。それによりアナは意識不明となってしまいますが、幸いトロールの力で助かります。しかし彼女は姉との楽しかった思い出だけ残し、魔法で遊んだ記憶を消去せざる得なくなる。王と后は、その力を世に知られぬようにと城中を閉ざした。それ以降、日に日に魔法の力が強くなっていくのをどうすることもできないまま、エルサは部屋に閉じこもり誰とも合わず成長する。一方、アナは、なぜ姉が自分と会わなくなったのか、理由もわからないまま何年も寂しい日々を過ごした。


姉妹が年頃になったある日、出かけた両親の乗った船が嵐により沈没。エルサとアナは両親を亡くした。アナはエルサの魔法のことは知らされてはいません。そしてさらに3年後、成人したエルサは女王として即位することになります。しかし魔法はコントロールできないまま。意思とは関係なく魔法が放出され触ったものが途端に凍りついてしまうのです。彼女はゴムの手袋をして、式をなんとか乗り切ろうとしていました。一方、アナは城が開放された事に無邪気に喜び、城の外ではしゃいでいると、他国のハンス王子と出会った。意気投合した二人はその日のうちに結婚をきめてしまうのです。エルサは戴冠式も終わりパーティーでハンスを紹介されますが、あまりにも早い展開に二人の結婚を反対。アンと口論になり、感情が高まったエルサはうっかり、人々の前で魔法を放出させてしまう。化け物扱いをされ、おびえる人々を見て彼女はそのまま城から逃げ出してしまいます。そして、エルサの感情の高まりは自身の意識なしに、アレンデール王国を永遠の冬に変えてしまいました。エルサは北の山にたどり着き、そこに氷の城を建て自分を抑えずに、ありのまま一人で生きていく決心をするのです。

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自分と似ている彼を運命の人と感じて。      結婚を反対したエルサと口論となり。      魔法が放出される。

アナはハンスに国を任せ姉を探しに出発。旅の途中で出会った山男のクリストフとトナカイのスヴェン、雪だるまオラフと北の山へ向かう。
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突然の冬到来に夏物大安売り。         狼から逃げ切った2人と1トナカイのスヴェン   夏に憧れるユニークな雪だるまのオラフ

氷の城にたどり着いたアナはエルサを説得するが、魔法がアナを傷つけることを恐れているエルサは頑なに拒絶する。そして自分の魔力が国中を永遠の冬にしてしまったことを知り、悲しみに感情が高まると再び魔法を放出させてしまい、それがアナの胸に当たってしまう。エルサはそれに気づかず、彼女が生み出した怪物マシュマロウにより彼らを追い払ってしまった。一行は逃げ切ったがアナの髪が白くなっていることに気付いたクリストフは、トロールたちのもとへ。トロールはアナの心臓に刺さった氷を取り除かなければ、やがて体は永遠に凍りついてしまうという。救うには「真実の愛」が必要だと告げられ、クリストフはアナを救うために婚約者のハンスのもとへスヴェンを走らせた。

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同じ頃、ハンスはアナを探しに氷の城にいた。 密かに暗殺を命じられていた刺客と戦うエルサ。 ハンスに助けられ?気を失い国に戻される

アレンデール王国に戻ったエルサは気がつくと、牢に閉じ込められ魔法を使えないように手には鉄のギブスを嵌められ鎖で繋がれていた。ハンスは、冬を終わらせるようエルサに告げるが、彼女もそんな方法など知る由がない。クリストフは、アナを城に送り届けた後、悲しげな表情で城を立ち去った。城に戻ったアナはハンスに会うと、事情を話しキスを求めた。しかしハンスの態度は突然豹変してしまう。彼はアナを愛してなどいませんでした。彼の目的はアレンデール王国を乗っ取ること。沢山の上の兄弟がいる彼が王になるには、他国の王女と結婚することが手っ取り早く、その目的の為にアナに近づいてきたのだった。当初はアナと結婚後、エルサを事故死に見せかけ殺して王になるつもりだったが、ここでアナが死んでくれれば、エルサを殺して、夏を取り戻し王になるという筋書きを思いついた。ハンスは衰弱していくアナを部屋に閉じ込めて放置し、城の重臣たちに彼女は死んだと伝え、その罪はエルサにあり、彼女を反逆罪で処刑すると宣言する。そして、捉えていたエルサを死刑にする為、兵士とハンスは牢に向かったが、エルサは強力な魔法を放出させ、牢から逃げ出していた。

肩をがっくり落として城を後にするクリストフを見てスヴェンは「戻れ」と合図する。彼が振り返ると王国に異様な現象が。アナの身に何が?
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再び彼は城に向かって走り出した。        アナを暖める為暖炉に火を点すオラフ      身近に愛があることを気づかせる。 

オラフは窓から一目散に戻ってくるクリストフを見つけた。アナはオラフと急いで城の外に出ると、クリフトスの姿がもうそこに見えていた。しかしその時、反対側の方向で妹の死を告げられ、無抵抗になっているエルサにハンスが剣を振りかざしているのを目撃する。アナはクリフトスのキスで心臓の氷を溶かすはずだったが、向かったのはエルサのところだった。アナはエルサを守りそのまま凍ってしまいます。

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泣き崩れるエルサの触れている部分から徐々に凍った体は溶け始めます。  「真実の愛」を知ったエルサは、王国を夏に戻せるように。

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オラフの頭上には雪雲を。              二人の恋は始まったばかり。          城門は開放。二度と閉ざさないと誓います

[あとがき]
ディズニー映画は昔のものも好きですが、時代の変化を感じることも楽しいですね。映像だけではなく登場人物からも、その時代の理想像が反映されているように思います。この作品中では、それが強く表現されているのがクリストフではないでしょうか。(白馬にまたがる王子様は異次元の代物(笑))美形にせず、少し人間くささが出ている感じも良いし、吹雪の中、トナカイに乗って猛スピードで城に戻るときの彼は、映像効果もあってアニメなのに惚れてしまいそうなかっこよさでした。観客動員効果に繋がったキャラクターの動作として、エルサがハイヒールで地を踏むと氷が広がるというシーンが何箇所かありますが、この動作の反復効果により作品を印象深いものにしています。さらに歌の中のセリフ「少しも寒くないわ」は、幼い子供たちが雪山を登るエルサを観て、きっと両親に聞くであろう質問の答え。単純ながらも、これも観客の記憶に強いインパクトを残していると思います。あと一歩と感じたのは、ハンスの役まわりが中途半端だった事です。(彼は「鏡」という設定)らしいのですが、それならもっと明確に「何を映し出しているのか」というのをシーンごとに明確に表現できているとよかったかもしれません。とはいえ、作り上げた映像のしなやかさには本当に脱帽させられました。また、仲の良い姉妹がいる女性にとっては、その存在の幸せを再確認させられる作品でもあると思います。

【Amazon.co.jp限定】アナと雪の女王 MovieNEX (オリジナル絵柄着せ替えアートカード付) [Blu-ray + DVD]

[監督]
クリス・バック

[主題歌/日本語版]
松たか子「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」(日本語歌)
May J.「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜(エンドソング)」

★受賞★
アカデミー長編アニメ映画賞受賞




★外部関連記事★

You talkin' to me ? 2nd_新たなる驚異を求めて/零下一四〇度の対決「アナと雪の女王」を見てきた。
物語の収束する過程で敢えて重箱の隅をつつくような事を書いてしまえば「オマエそれが今出来るなら話もっと早かったやないかい!ここまでの苦労はなんやねん!」と言ってしまいそうなところも有るには有るのだけれど(ーー;)最終的には笑って許せる程度のものでむしろこういうクロージングのさせ方の方が見てる方としたら気持ち良いいんじゃないかとも思えた(所謂「ザ・大団円」とでも言いますか)それともひとつ感じたのは本編すべてに於いて女子力の高い映画だったというか、オラフ以外の男子登場人物が顔の特徴もあんまり無くて誰も彼もが添え物に見えてしまっているのも徹底しているなと。映画の扱い優先順位としてヒロイン>マスコット>どうぶつ>オトコとハッキリしててそこは面白い。

2014-07-21(Mon)

アレキサンダー/「未知の地」に執心した王

2004年 アメリカ
アレキサンダー古代マケドニア、史上最大の大帝国を築いた英雄アレキサンダー大王の物語です。あちらのお国、紀元前数百年という歴史の記録が残っていることに、いつも感心してしまいますが、大王の細かな人物像までは全て明確とまではいかないようです。彼はバイセクシャルであったという見方がされており、この作品では、それが強く描かれすぎていて、なんだか200億円という膨大な製作費が勿体無い感じが所々残ります。まぁ、それでも、時代と物語の流れはほぼ忠実に説明されているようなので、ざっくりと、大王の物語を知ることはできます。作品のスタイルは単なるナレーションで進むことを避け、舞台を時折、語り手のプトレマイオスの時代に戻しながら、物語を「忠実に?」駆け足で進めていきます。

[あらすじ]
物語を語るのはアレキサンダーの死から約40年後、彼の部下であり共に戦った、エジプトのファラオのプトレマイオス。彼はアレキサンダーの物語を後世に伝えるために、これを従僕に記録させている。

-時代は遡って紀元前350年代-。マケドニア王フィリッポスと母オリンピアス の間にアレキサンダーは生まれた。夫婦の間に愛はなく、母親は、息子を王にすることだけに情熱を燃やし、父親は権力を奪われることを恐れていた。愛に飢えたアレキサンダーは、ヘファイスティオンら同年代の友人との友情に心の平穏を見出していた。そんな彼が20歳になった時に、何者かにより父王が暗殺される。アレキサンダーは父親の死を悲しむ間もないまま突然にマケドニアの王になったのです。

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蛇と戯れる母オリンピュアス(アンジェ)似合いすぎ。 子供の頃からアリストテレスから学問を学ぶ。 父暗殺され20歳で王になる。 

彼は、父の意志を継ぎ遠征出発。西アジア、エジプトを制覇すると、強敵ペルシア軍と対峙。アレキサンダーの巧みな戦略により圧倒的に少ない軍隊でペルシャ軍に勝利する。王ダレイオス3世は寸前のところで逃亡した。アレキサンダーは首都バビロンを侵略。

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戦闘を指揮するダレイオス3世              フィッタロスとパルメニオン(親子です)   戦闘時、大王を救った黒のクレイトス

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蠱惑の都バビロンとダレイオス3世の娘     大王の恋人ヘファイスフィオン          山岳民族の娘との結婚を反対する部下たち

やがて、バビロンを出て、軍を更に東方へ進めた。途中、侵略した部落の山岳民族の長の娘ロクサネと結婚する。

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野心家カッサンドロスも結婚に反対し怒る。   結婚初夜にヘファイスフィオンったら大王に愛を語っているもんだから花嫁ロクサネ暴れまくる

ある日、アレキサンダーの暗殺計画が発覚。首謀者は共に学び戦ってきたフィッタロス。彼は処刑される前に父親との関与を自白しなかったがアレキサンダーは父親のパルメニオンの側近にその咎を認めさせると、出向かせたクレイトスによってパルメニオンを殺害させた。

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ヒマラヤ山脈を見上げるプトレマイオス。アレキサンダーは、この次は山を越えると誓い、ここからインドへ進路を進めることを決める。

インドでの遠征は非常に過酷だった。長期間、雨は振り続け兵士は体力を消耗、財宝も豊かな国も無く次第に、部下達はアレキサンダーに不平・不満を漏らすようになっていく。そんなある日の酒の席で、黒のクレイトスは、征服したアジア人に対し、自分たちと同等の扱いをする事やパルメニオンの殺害を命じたこと、更にはロクサネが妊娠しないことを激しく非難した。我を忘れたアレキサンダーは、黒のクレイトスを酔った勢いで殺害してしまう。彼はすぐに自分がしてしまったことに激しく後悔し嘆いた。このとき、出発から既に6年の月日が経過しており、他の兵士達も疲れきっていた。彼は遠征を続けようとしたが、既に兵士の士気は低く、国に帰りたいと逆らい、アレキサンダーを罵倒する者まで出た。彼らを反逆者として殺しアレキサンダーは過酷な遠征をさらに続ける。

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インドでの戦いは熾烈を極めアレキサンダーは重症を負うが九死に一生を得て、ようやくバビロンへ戻ることを決めた。都に戻った彼はさらに妻を二人娶った後、再び遠征への思いに駆られた。しかし、ヘファイスフィオンが原因不明で急死し、そして彼も・・・。

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アレキサンダー大王の殺害は暗黙の了解?   何故かカッサンドロスだけ濃い化粧。     もう遠征なんかしたかねーよと思っているかも?

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アレキサンダーは「最強のものに」と。このはっきりしない遺言により、後継者争いが始まる。同時にオリンピュアスを含む女達の攻防も。

[あとがき]
アレキサンダーは死して、世界の果てを見たのでしょうか・・。もし死んでいなかったら(殺されていなければ?)彼はこの先も、とどまることを知らず、死ぬまで進み続けたのではないでしょうか。彼は根っからの冒険家だったのだろうと思うのです。きっと、世界の全てを見ない限り「これで終わり」というのがなかったのだろうと想像します。彼は、バビロンの征服以降は、侵略した地から、ただ奪うだけではなく、民族間を融合させることを理想としていたようです。この時代の人とは考えられないほど先進的ですが、周りの人間達はついていけなかったのでしょうね。ヒマラヤ山脈まで越えようとい言うぐらいの、この彼の執念なら、インド、中国を超え、ひょっとすると(歴史上では/1500年代に発見されたとされる)日本にも来ていたかもしれない。などと、空想するとなんだか楽しいです。しかし、残念ながら、この作品に関しては、さっぱし理解できない「おっさん同士の接吻」シーンや同性愛描写、とどめに主役のコリンが男とベッドに入るときの、お袋さんぶらりんには流石に「ガックシ」しました。何を見せたかったのでしょう。程ほどにしてほしかったです。英雄というよりは、弱みを見せる人間臭いアレキサンダーが強く描かれているけれど、彼には多くの逸話があるのだから、それをもっと再現してほしかったという感じがします。それと、バビロンが舞台のときに、ペルシア人の侵略の時から廃退をはじめたバビロンの空中庭園と、崩壊し土台だけになっているバベルの塔の二つの建築物を、折角、都市の景色の中に登場させているのだから、少しは触れて欲しかったとちょっと残念。(実際には、この時代に残骸だけでも、あったかどうかも不明ではありますが。) それと、戦いで負けたペルシャ王国ダレイオス3世は、逃亡し、バビロンをアレキサンダ-に奪われましたが、大王は彼の残された家族達に敬意を払い寛容に扱ったことは作品にも反映されています。しかし、後にそれを知ったダレイオス3世がアレキサンダーに賞賛を寄せたというストーリーは反映されていません。「こうしたらよかったのに」と思ってしまうことの多い残念な作品。いつか再びアレキサンダーの伝記映画が製作される事を期待します。


[監督]
オリバー・ストーン
[出演]
アレキサンダーコリン・ファレル
オリンピアスアンジェリーナ・ジョリー
フィリッポス2世ヴァル・キルマー
プトレマイオス1世  エリオット・コーワン&アンソニー・ホプキンス
ヘファイスティオンジャレッド・レト
ロクサネロザリオ・ドーソン
カッサンドロスジョナサン・リースマイヤーズ
クレイトスゲイリー・ストレッチ
アリストテレスクリストファー・プラマー
[検索用]コリン・ファレル/アンジェリーナ・ジョリー/ヴァル・キルマー/アンソニー・ホプキンス/エリオット・コーワン/ジャレッド・レト/ジョナサン・リースマイヤーズ/クリストファー・プラマー/ゲイリー・ストレッチ/



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風の便りに/アレキサンダー東征の真意(1) 夢を追う進軍








2014-03-27(Thu)

アルバート氏の人生/不器用な主人公の幸せのビジョン

2011年 アイルランド
アルバート氏の人生この映画は、30年程前にグレン・クローズが舞台で演じ、それ以降、本人が、何度も映画製作を試みてきたという、彼女の思い入れの強い作品です。文芸映画的なものと予測していましたが、それだけではなく、予想外なところで可笑しかったり、驚かされたりと、ありきたりではないところが良かったように思います。物語の舞台となっている19世紀のアイルランドは、飢饉貧困時代。上流階級以外の人々は生きていくのが精一杯。そんな中で、特異な生き方をした、一人の女性と、彼女を取り巻く、登場人物達のそれぞれの生き様と心理が丁寧に描かれています。

主人公のアルバートは貴族の子であり私生児だった。親類と共に母からの援助を受けて成長していたが、母がなくなると、その援助を受けることができなくなり、スラム街で生活していた。やがてその保護者も亡くし、たった14歳でひとりになってしまう。そんな中、無情にも男達に身を傷つけられるという暗い過去があった。当時のアイルランドは、成人男性でさえ仕事に付くことが困難だったため、国外に渡航ができる者は仕事を求めて国を次々出て行くという現象が起きていた。そんな状況で、たった14歳の身寄りのない少女を雇うところなどあるわけもない。そんな彼女が生きるために選択した道は「男性になること」だった。男になる事で、仕事を得、男になることで身を守り、そして長年女性である事を誰にも知られず、給仕人(ウェイター)として生きてきた。こんな秘密を持っている彼女は、人と距離を離さざる得ない寂しい人生を送ってきた。彼女のたった一つの楽しみは、毎日コツコツと貯めたお金を手帳に記録すること。務めているホテルの自分の部屋の床下にお金を隠し、将来自分の店を持つことを毎日夢見て過ごしていた。そんな彼女にある日、ホテルの女主人から、塗装の仕事に来ていた、ペンキ職人の男を部屋に泊めるようにと言われる。断りきれないアルバートは仕方なく・・。

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案の定、ペンキ職人の男ペイジにバレてしまう。 あまりにも心配するアルバートに・・・      !?なにかの冗談ですかぁぁーーー!

ペイジは同性愛者で結婚していたことを知る。これがきっかけでアルバートは「パートナー」というもうひとつの希望を持つようになります。
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この日ホテルで仮装パーティ。2組の貴族夫婦客、彼らはそれぞれに同性愛者で、男装&女装で参加。(ワンピ姿のジョナにビックリ)

アルバートはペイジのような生活を自分も手に入れられるかもしれないと夢を膨らませます。そして一緒に働いているメイドの可愛いヘレンを誘いますが、彼女はクズな男ジョーと交際中。ジョーはヘレンをアルバートと付き合わせ、最終的にはお金を貢がせようと企むのです。

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他力本願のジョーの夢はアメリカ         ヘレンの気持ちを置き去りにアルバートの妄想は一人歩き 初夜?ッテナニスルツモリ!!

やがてヘレンはジョーとの子を孕んでしまいます。ジョーは子供の面倒を見ると言いつつもその態度はヘレンの心を傷つけます。その頃、国中でチフスが流行り、ホテルでもメイドが一人死に、アルバートも感染した。その後、幸運にも回復したアルバートは、ペイジが結婚するときに、自分が女であることを、いつ、どのように打ち明けたのかを聞こうと彼の家を訪ねた。しかしペイジは妻をチフスで亡くし失意の底にいた。そんなペイジにアルバートは自分と一緒に暮らさないかと提案する。あまりの唐突さにペイジは、アルバートの心理を感じとったのか、パートナーが欲しければ自分で探すことだ。と言い、アルバートに、自分の妻が作った女性の服を着せ、二人で海辺を散歩した。アルバートは女性用の服装で楽しそうに走ります。彼女は同性愛者なのではなく、ただの男装した女性だと感じるシーンです。不器用なアルバートは ペイジと同じ方法、「結婚」と言う形でパートナーを得ることを考えたのですが、彼女が本当に求めたのは、「家族」だったのではないでしょうか。女性であることを隠していたアルバートにとっては、同性の友人すらいなかったのだから。ヘレンは妹のような、娘のような、そんな感覚だったのでは?。恋愛感情そのものを知らないアルバートは、へレンがジョーと付き合っているのを知っていても、嫉妬の感情などなく、ヘレンを心配するだけでした。また、ヘレンにプロポーズしているのに、妻を亡くしたペイジに一緒に住もうと言ったりと、アルバート自身が、「好意を抱く」のと「恋愛感情」との区別がつかない(気づかない)という、純粋でもあり、欠落ともとれる複雑な感情を表現しているように思えました。
一方、何度かのデートをした上、結婚まで申し込みながらも、手も握らないアルバートを理解できないヘレンは・・。

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キレまくるヘレンの怒りのチュゥ!          ヘレンの不安に一撃のセリフ。        泣き崩れる。

やがて、ヘレンの不安は的中する。ジョーはヘレンに自分は父親になれないと告げ、二人は別れます。同時にアルバートもなんとも「あっけなく」亡くなってしまうのです。責任放棄の男はアメリカへ。アルバートが女性だったという事実は世間を騒がせた。アルバートが貯めていた大金をこっそりと盗んだホテルの女主人は、ペイジを呼びホテルの塗装を依頼した。アルバートの部屋に泊まることになったペイジは、彼女の母の写真を見つける。その写真を眺めながら、孤独な人生を送らなければならなかった、アルバートの描いた夢を思う。ふと窓の外を見ると、洗濯物の隙間から赤ん坊を抱いたヘレンの姿が。他に行き場のないヘレンが、我が子と一緒にいるためには、女夫人から、ただ働きの条件を突きつけられても、それを呑むしか生きていく方法がなかった。それを知ったペイジが彼女に告げた言葉は・・。
アルバートが描いた幸せのビジョンはペイジによって引き継がれていく・・・。

ヘレンはアルバートが女性だったことに、さぞ驚いたことでしょう。この後、彼女には二度目の驚きが待っています。文芸的な作品なのに、 そうではない、アンバランスなシーンを想像をしてしまうことと、この先に思い浮かぶ親子の幸せの情景が、悲しい感情を和らげます。 

この作品のキャストですが、なかなか面白いです。ペイジ役は当初、本当の男優と思っていたのですが、ビックリ、あの1992年に公開の映画 『嵐が丘』で女中役で出ていたジャネット・マクティアでした。ちなみに『嵐が丘』はイギリスのブロンテ兄弟のエミリーが執筆した小説で、その姉妹のシャーロットがとてもロマンティックな恋愛小説「ジェーン・エア」を執筆しこれも何度も映画化されているのですが、一番最近映画化されたのが、この「アルバート氏の人生」と同時期に公開されていて、今回のヘレン役のワシコスカが、主役のジェーン・エアを演じています。こちらも良い作品に仕上がっていて、かなりお勧め。そしてもう一人、注目を浴びているのがジョー役のアーロン君。『アンナ・カレーニナ』でその美形ぶりが話題になりました。そして私が好きなジョナサンは・・ちょびっとの役でした。どうせ女装するなら徹底的にやって欲しかった・・www・・(でも目立っちゃダメなのね、脇役なので)。ちなみにジョナサンが、この作品の前年まで主演した『チューダーズ <ヘンリー8世 背徳の王冠>』の時に、彼の王妃役として共演していたマリア・ドイル・ケネディがジョナサンと続けて共演で登場していたのにも驚きました。彼女が出演する作品は、自国のTVドラマぐらいで知名度の低い女優さんですが、今回はメイド役として、かなりの出番がありました。そして、主役のグレン・クローズですが、彼女はこの作品で、製作/主演/共同脚色/主題歌の作詞の4役をこなし、アカデミー賞で、主演女優/助演女優/メイクアップ/の3部門でノミネートされるという功績を残しました。過去30年間の間に、何度か製作を試みて頓挫している作品だったそうですが、個人的には女フェロモンが抜けてしまっている(笑)今の年齢になってからのアルバートで正解だったと感じました。

アルバート氏の人生 [DVD]


[監督]
ロドリゴ・ガルシア

[出演]
アルバート・ノッブス     グレン・クローズ
ヘレン・ドーズ        ミア・ワシコウスカ
ジョー・マッキンス     アーロン・ジョンソン
ヒューバート・ペイジ    ジャネット・マクティア
ホロラン医師        ブレンダン・グリーソン
ベイカー夫人        ポーリン・コリンズ
ポリー            ブレンダ・フリッカー
ヤレル子爵         ジョナサン・リース=マイヤーズ
メアリー           マリア・ドイル・ケネディ
キャスリーン・ペイジ    ブロナー・ギャラガー



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マンガソムリエ煉獄編/アルバート氏の人生
この、主人公自身もコントロールできない、既に描いてしまった幸福像への妄執ってやつは、わりと普遍的な物語なのかもしれない。だれだって、ずっと思い描いてきた幸福ってのはあって。それを実現するために四苦八苦しながら生きていくわけだけど。生きていく間にやっぱり、それとは全然違った形の幸福ってのが提示される時はある。でも、その時にすぐにそっちにハンドルを切れるかっていうと、なかなかそうはいかない。それは、思い描いてしまった幸福像という呪縛だ。


2014-02-10(Mon)

アンナ・カレーニナ/貴族世界の檻

2012年 イギリス
アンナ・カレーニナロシア帝国時代のレフ・トルストイの小説で、何度も映像化されてきた有名な物語です。2012年に公開されたこの映画は、ジョー・ライト監督と、キーラ・ナイトレイの三度目のタッグで製作されたもの。この作品は、演劇を鑑賞しているような、面白い作風に仕上げていて、カット無しで何シーンも場面が変化したり、カメラ移動だけでストーリーをつなげていったり、カーテンを開けたら、別の場所へ移動していたりと、凝った演出技法が物語を簡潔明瞭にしていて、長編小説の映画であるにも関わらず、限られた時間で判りやすく、しかも官能的に撮られています。模型電車を使っているところも面白い。目に飛び込む映像はロイヤルブルーからグリーンの中間色が多く、白・青・緑の世界のなかで、背徳の恋に狂う主人公アンナの、あからさまな「女の性」が映し出されています。彼女の恋の相手のアーロン・テイラーが演じるヴロンスキーは宝塚の男役みたいな雰囲気で、作品の主要カラーのロイヤルブルーがよく似合っていました。キーラより、彼のほうを綺麗に撮っているように感じました。そして、アンナの夫のカレーニン役にはジュード・ロウ。髪の毛が薄くなったとはいえ、まだまだ男前ですが、妻を寝取られた男を演じ、そのソフトな語り口からカレーニンの人間像を見事に表現しています。舞台となっている1900年代初頭までのロシア帝国時代の世情は、不貞で離婚した場合、罪を犯したほうはその後、正式な結婚は認められず、子も私生児となるという問題もあり簡単ではありませんでした。さらに貴族にとって離婚は社会的名誉が著しく傷つく事であり、カレーニンも別れに同意することができない状況が続く中、彼女は縺れて梳きようのない複雑な糸を、自ら引きちぎるように命を絶つという不幸な結末をたどります。けれど、この作品で真に伝えたいことは、同時進行で起きた、もうひとつの恋との比較。答えを観客に促しているようです。
階級も財産も全て捨てたリョーヴィンの兄、ただ一人の女の為に。1479546_558598970881653_820526863_n.jpg
リョーヴィンは病気の兄に医者にかかり静養を薦めるが、妻のマーシャも一緒にと望む兄に、同意できない事で兄は彼の勧めを拒絶する。

[あらすじ]
政府高官カレーニンの妻アンナは、兄夫婦に会うためモスクワに向かう。このとき、到着した駅で将校のヴロンスキーに会うが、彼がアンナの兄嫁の妹キティと恋仲である事を知る。彼が気になりつつも、兄のところへ向かった。彼女は兄夫婦から誘われ舞踏会に行くことになる。

同じ頃、キティに想いを寄せていた地方の地主リョーヴィンは彼女に求婚するが、ヴロンスキーからの結婚の申し込みを期待していた彼女はその申し出を断ってしまう。失意のリョーヴィンは、領地に戻りその想いを断ち切るかのように好きな農業経営に熱心に取り組んでいく。

舞踏会に行ったアンナは、再びヴロンスキーと顔を合わせることになる。彼はアンナをダンスに誘い踊りだすと、惹かれあう二人の様子は、はたから見ても疑わしく見えるほどであった。その様子をキティはショックの眼差しで見つめる。我に返ったアンナは感情を押し殺しペテルブルクの自宅へ戻った。しかし、ヴロンスキーはキティとの仲に終止符を打ち、アンナを追ってきてしまう。最初は感情を隠していたアンナも、ついには本心を言葉にしてしまい、二人の関係は深まる。やがて、アンナはヴロンスキーとの子を宿し、カレーニンとの離婚を望んだ。

当初、世間体を気にしたカレーニンは二人の関係を知ってもそれを終わらせるよう促した。しかし、アンナが妊娠した事で離婚を宣言。
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だが、彼女が息子を連れて行くことを許さない。カレーニンは離婚してアンナが一人で出て行くまで家に帰らないと屋敷を出て行った。

息子を手放したくないアンナは屋敷に居続け子供を出産した。しかし、このお産で重態となる。いっそアンナが死んでくれればいいと思っていたカレーニンだが、許しを請うアンナに会うと、寛大な態度で彼女を許す。しかしアンナは回復すると再びヴロンスキーを求めてしまう。

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彼女は屋敷を出て行き、ヴロンスキーのもとへ・・二人は南の国に旅立った。

キティとリョーヴィンを気にかけている兄夫婦は・・。
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リョーヴィンはキティと結婚し、領地の農村で新婚生活を始める。まもなく行方がわからなくなっていた兄を見つけると兄は病気で瀕死の状態だった。リョーヴィンは兄の妻を「罪の女」と言い、兄から離し、キティにも会わせず彼の看病をしようとしたが、キティは自ら、リョーヴィンの兄の看病にあたり、そして彼の妻を追い出すことはせず、彼女と一緒に看病を始めた。その様子を見たリョーヴィンの心は・・・。

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帰国したアンナを待っていたのは、彼女の不貞を知った社交界の人間達の冷淡な仕打ちであった。社交界にいられなくなってしまった二人はヴロンスキーの領地に移った。しかし次第にヴロンスキーは母の使いで一緒に居られる時間が少なくなっていく。さらに自身の離婚の話も進まない。さらにアンナはヴロンスキーの母親が宛がった花嫁候補の女性に彼の愛情が移ったのではないかと思い絶望する。そして失意のまま駅に向かい列車に身を投げる。

一方、兄を看取ったリョーヴィンは、キティとの間に子供を授かり質素でありながらも幸せな家庭を築いていた。雇っている小作人と共に畑仕事をするリョーヴィンは農夫達にも慕われていた。そんな彼は、一人の農夫の言葉で、ある事に気が付く。

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[あとがき]
貴族社会に囚われ、自分の感情のままに生き、愛した人を信じる事もできなくなり、思い通りにならず癇癪を起こし、絶望し死んだアンナ。高い身分にも関わらず、農村で質素に生きるリョーヴィンの妻となったキティとの対比。恋に翻弄されるよりも、誰かの為に生きていくことのほうが尊いという事を印象付けられます。アンナにおいては息子や夫や生まれてきた娘の為、その想いを記憶の片隅にしまって、家族の為に生きていけたなら、きっと救われたのだろう。と思う一方、そんなふうに生きられなかった事を否定することもできません。本能のまま突き進むのも人の証なのでしょう。ちなみにリョーヴィンのモデルは、原作者自身、「トルストイ」のようです。質素な生活を好み、奥様に恨み言を言われてはいたようですが・・。このような作品を生み出した彼の人生がどのようなものであったのか、機会があったら詳しく調べてみたいと思いました。

アンナ・カレーニナ (字幕版)

[監督]
ジョー・ライト
[出演]
アンナ・カレーニナ       キーラ・ナイトレイ
アレクセイ・カレーニン     ジュード・ロウ
ヴロンスキー伯爵        アーロン・テイラー=ジョンソン
アンナの兄・オブロンスキー  マシュー・マクファディン
オブロンスキーの妻・ドリー  ケリー・マクドナルド
コンスタンティン・リョーヴィン ドーナル・グリーソン
キティ               アリシア・ヴィキャンデル
ベツィ皇女            ルース・ウィルソン
ソロキナ嬢            カーラ・デルヴィーヌ
ヴロンスカヤ伯爵夫人     オリヴィア・ウィリアムズ
リディア・イワノヴナ伯爵夫人 エミリー・ワトソン



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ニューヨーク徒然日記/映画: アンナ・カレーニナ
トルストイの名作を華麗に映画化した作品。19世紀末のロシアの爛熟した社交界を舞台に、登場人物たちがまとう衣装は、アカデミー衣装デザイン賞受賞も納得の豪華絢爛さ。ナイトレイはどちらかと言えば個性的な顔立ちの女優さんだと思うが、ここでは美しさを存分に発揮していて、虚飾に満ちた貴族社会の中で、誠実に生きようとするアンナ役を熱演!

2014-01-15(Wed)

アビエイター ハワード・ヒューズ/地球上の富の半分を持つと言われた男

2004年 アメリカ
アビエイター1900年の初頭に実在した富豪のハワード・ヒューズの半生を描いた作品。彼は18歳までに両親を相次いで亡くした。莫大な遺産を相続したハワードは映画製作と飛行機にその財産をつぎ込んでいた。飛行場を持ち、沢山の戦闘機を購入し、それを自ら操縦しながら撮影した映画「地獄の天使」を完成させます。パイロットとしても世界一周の記録を達成し話題の人物となっていた。彼の人生は順調に見えていたが、徐々にどうすることも出来ない自身の行動に悩むようになっていく。そんな主人公を演じるのはレオナルド・ディカプリオ。彼の演技の中で癇に障るような表情や、度を越した潔癖症や奇行ぶりが見どころ。メインキャストの俳優群もハイレベル揃い。そのなかでも個性の強い恋人役キャサリン・ヘプバーンに、ケイト・ブランシェット。実際のキャサリンの人物像ってこんな感じだったの?と興味をそそられました。

実はこの作品、以前観ていたものですが、当時は主人公のハワード・ヒューズが、ただ単に神経質で病的であり、飛行機の墜落シーンが見事だった。というぐらいの記憶しかなかったのです。何故なら、あまりにも現実離れしていたから。湯水のようにカネをつぎ込んだ映画の製作、飛行機にあれ程の莫大な個人資金を使うなど、破天荒すぎて現実とは考えもしなかったのです。私にとって、ハワードを知らないで観た、最初の作品は、「ただのフィックションの映画」でした。改めて、現実離れの事が、現実だったことに驚いたのです。作品中では数々の見事なシーンがありますが、墜落シーンの他にも、目が離せない迫力の飛行シーンが満載。青空を舞う様が爽快に撮られているシーンは観ていて気分がいい。特に、映画の後半に出てくる、ビル5階建てに匹敵する高さの飛行機「H-4 ハーキュリーズ」が水上から浮かび上がるシーンにはワクワクしました。1個人の現実と思うと、とにかくスケール大きいです。

そして、この映画はハワードが実在の人物と知ったことで「ただの娯楽映画」ではなくなりました。ハワードの行動は「奇行」ではなく「病気」として観ていることに変わったからです。現代であれば、その奇行ぶりは明らかに精神病と診断されているはずだろうけれど、この症状をこの時代に、それが病気と判断される程、医学は進歩していたのでしょうか?疑問です。そして、世間の目はどうだったのでしょうか?時代の寵児として世間からもてはやされた男が、自分の本当の姿をさらすことなど出来たでしょうか?人前に出る機会が多く難聴でありながら、補聴器をつけないところからも、プライドの高さと妥協を許さない彼の性格が想像できるように、それは皆無だったのではないのでしょうか。ハワードは年齢を重ねるごとにその精神の症状に苦しみ、そして、この映画の最後は「隔離の始まり」を思わせるシーンで幕を閉じます。

彼を知ってから観るのと、知らずに観るのとでは雲泥の差がある作品だと思います。欲を言えば、最後に彼の病気についての記述と晩年の彼の死、それはとても孤独なものでしたが、彼が後世に残したもの それが現在にどう生かされているのか、そんなナレーションがあったら、たとえハワードを知らなくても、最初に見たときのこの作品の印象が変わっていたのではないかと思うのです。

アビエイター 通常版 [DVD]

[監督]
マーティン・スコセッシ

[出演]
ハワード・ヒューズレオナルド・ディカプリオ
キャサリン・ヘプバーンケイト・ブランシェット
エヴァ・ガードナーケイト・ベッキンセイル
フィッツ教授イアン・ホルム
エロール・フリンジュード・ロウ
ブリュースター上院議員 アラン・アルダ
パンナム社長アレック・ボールドウィン
ジーン・ハーロウグウェン・ステファニー
ノア・ディートリッヒジョン・C・ライリー
ジャック・フライダニー・ヒューストン
ローランド・スイートウィレム・デフォー


[受賞]
第77回アカデミー賞:助演女優賞(ケイト・ブランシェット)撮影賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞
第62回ゴールデングローブ賞:作品賞、主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)作曲賞
英国アカデミー賞:作品賞、助演女優賞(ケイト・ブランシェット)プロダクションデザイン賞、メイクアップ&ヘアー賞
第30回ロサンゼルス映画批評家協会賞:美術賞
第10回放送映画批評家協会賞:監督賞、音響賞



ハワード・ヒューズ(1905年12月24日 - 1976年4月5日)
18-85_20140115115915f33.jpg1905年、テキサス州ヒューストンに生まれる。父親は油田採掘のためのドリルの発明で巨万の富を得ていた。ハワードは父方の遺伝による難聴、母親の異常なまでの潔癖症を引き継いでいた。彼が16歳のときに母親が病死、その2年後に父親が急死する。資産は数千万ドルと評価されていた。ハワードは18歳でその全てを相続すると父親の会社を人に任せ、1925年ハリウッドに移住。自ら映画製作を手がけるようになり、そして飛行家(アビエイター)になりたいとその夢をかなえる。2作目に製作した1927年の『美人国二人行脚』では監督のルイス・マイルストンに[第一回アカデミー監督賞]をもたらした。その後、400万ドルの個人資産をつぎ込み、史上初の航空アクション映画『地獄の天使』を完成させる。映画は1930年に公開され、大ヒットとなるが、費用が掛かり過ぎていたため制作費を回収するには至らなかった。その後に製作した2作品もヒットとなり成功を収めた。

1932年航空会社TWAを買収しオーナーとなる。パイロットとしては水上飛行機で大陸横断飛行を成功させ1934年には全米飛行大会アマチュア部門で優勝。翌年にはヒューズ航空機制作会社を設立。自ら開発したH-1で陸上機のスピード世界記録/時速567kmを樹立した。1938年NY-パリ間を3日19時間で横断しそれまでの記録を半分にするという功績を残した。1939年には西部劇『ならず者 』を製作。途中から彼は自らメガホンをとっている。1944年「カリフォルニア映画社」を監督と共同で設立。同年 当時としては異例の大陸横断を旅客飛行機で挑みワシントン-ロサンゼルス間の飛行に成功する。1942年第二次世界大戦が始まると1800万ドルの政府資金援助を受け超大型飛行艇「H-4 ハーキュリーズ」の建造に着手する。後に政府からのこの受注にあたり不正があったとの疑いで院調査委員会に召喚され審問を受けている。この飛行艇は大戦の終結により購入契約が破棄され1度だけ飛行をしたあとはエバーグリーン航空博物館で展示されている。

数回の墜落事故による脳への損傷のせいか、遺伝的なものなのか、強迫性障害と思われる行動を繰り返していた。1944年頃から細菌を恐れるようになりホテルの室内で裸で過ごす生活を送るようになる。1950年代にはラスベガスのホテルを本拠にし、一時はフラミンゴ・ホテルの一翼を借り切って生活をしていた。1953年に保有するヒューズ・エアクラフト社の全株式を拠出してハワード・ヒューズ医学研究所を設立した。1957年、52歳で3人目の妻となる女優ジーン・ピーターズと結婚、この頃からインタビューをすべて拒否するようになり、公的な場に姿を現さなくなります。1966年、経営の混乱を受けTWAを5億ドルで売却。同年、ラスヴェガスのデザート・インを買収。最上階のスイートルームに居を構え滅多にホテルから出ることがなくなる。1960年代は、ラスベガスのカジノ、ホテル、土地その他を買収。個人資産20億ドルと推定される資産家となる。夫人とは離婚し、跡継ぎをもつこともなく、その後はバハマ諸島、ニカラグアなどのホテルを転々とし、細菌から隔離された室内の中で??彼の事業の拡大は続く。

1970年 エアウエスト航空を買収、1972年電話による記者会見を行った。これが世間の場に、その存在を現した最後となります。同年、父親の会社「ヒューズ工作機械」を売却。4年後の1976年、メキシコ・アカプルコのホテルに滞在していた彼は、チャーターされたジェット機でヒューストンの病院に搬送されたが病院に着く前に死亡した。70歳であった。死因は脳血管障害、心臓病などとされたが、指紋を取らなければ判別できないほどその容貌が変化していたと言われている。ヒューズの遺産は個人資産だけでも数十億ドルにものぼり、全て合わせると天文学的な額になった。400人もの人々が彼の遺産をめぐって争い、最終的には従兄弟や過去の伴侶達らに分配された。また、宇宙開発や医学の研究のために寄付された。この処理に20年近くの歳月を要したという。

1953年に設立された「ハワード・ヒューズ医学研究所」は現在、ビル&メリンダゲイツ財団に次ぐ全米第2位の慈善団体であり、イギリスのウェルカム・トラストに次ぐ世界第2位の医学研究財団となっている。ここの研究員から多くのノーベル賞受賞者を輩出している。

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H-4 ハーキュリーズ

ハワード・ヒューズ―謎の大富豪 (1977年) (角川文庫)



★外部関連記事★

ランダム・マンダラ 強迫神経症があっても  その3 「アビエイター」
考えてみると、もし彼がこのような我の強い性格でなかったら、18歳で巨億の富を継いだとき、周囲に利用され、邪魔され、自分の夢を追うことなどできなかったでしょう。あるいは、有り余る富のために意欲をなくし、酔生夢死に終わったかもしれません。幾多の苦しみに悩みながらも、空を目指し、夢を追った生き様こそが、立派なのかもしれません。私はこの「アビエイター」から、そんなことを感じ取りました。強迫神経症があっても夢は追える。いや、何があっても夢は追えるのです。

2013-05-17(Fri)

嵐が丘(1992年)/愛憎と妄執の孤人

1992年 イギリス
Wuthering Heights1800年代に生きた小説家「エミリー・ブロンテ」の同名小説の映画化作品。一人の女性だけを想い、報われることがなかった男の復讐とその終焉を描いている。この作品は製作上仕方のないことなのかもしれませんが、様々な箇所が割愛されており、所々分かりにくい箇所があるのが残念。時間的に難しいかったならば、もう少し話の流れがわかるセリフが入っていたらよかったかもしれません。ストーリーを知っているという前提で作られているようで、知らない方は、細かなところで疑問が残るかもしれません。それでも、大まかなストーリは理解はできますし、映像美も抜群。俳優の演技も見事なので、一見の価値はある作品です。

[あらすじ]
物語はレイフ演じるヒースクリフの復讐劇がメイン。(映画中での割愛部分も追記しました)
ある日、人里離れた田舎にある館「嵐が丘」の主人アーンショーが身寄りのない男児を連れて帰ってきた。彼をヒースクリフと名づけ自分の子ヒンドリーとキャシー同様に可愛がって育てた。ヒースクリフはキャシーと仲が良くキャシーは自分の兄ヒンドリーよりも彼が好きだった。しかしアーンショーが亡くなりヒンドリーが主人になると、ヒースクリフを召使に追いやってしまう。ヒースクリフはヒンドリーを恨むこともなく懸命に働きます。そして年頃になったヒースクリフとキャシーはお互いに恋心を抱くようになっていた。 二人の幸せな時はある日、近隣のお屋敷「スラッシュクロス」に行った事で終わることになる。そこには上流階級のエドガーとイザベラが住んでいた。彼らと親交を深めていくキャシーにヒースクリフは異常な嫉妬心をあらわにする。

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上流階級の生活に憧れを持ったキャシーは、召使の女性ネリーにエドガーから求婚された事を告げる。ヒースクリフを愛してはいるが彼との結婚は不名誉だと話した。それを立ち聞きしていたヒースクリフはショックを受け嵐の中、館を出て行く。彼を失ったキャシーは深く後悔する。

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その後、キャシーはエドガーと結婚。そして2年後、ヒースクリフは裕福な紳士になって彼女らの前に現れる。
彼が戻った理由、それは自分を下働きにした「ヒンドリー」、キャシーを奪った「エドガー」、自分を捨てた「キャシー」への復讐だった。

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ヒンドリーは賭博による借金のため「嵐が丘」を抵当にいれ、ヒースクリフはそれを肩代わりし「嵐が丘」の主人となっていた。そして彼は、エドガーとキャシーの住む「スラッシュクロス」を訪れ、エドガーの妹イザベラを誘惑し結婚する。しかしイザベラに対して当初から愛情などなく彼女を虐待した。イザベラは「嵐が丘」を出て一人で息子「リントン」を出産した。

ヒースクリフはエドガーに内緒でキャシーに度々会いに行き彼女に愛を語っていた。二人の間で板挟みになったキャシーは苦しみ病気を患う。そんな中で女児を出産。子供はキャサリンと名づけられた。病床の彼女に会いに行ったヒースクリフは、自分を捨てた彼女を執拗に責める。やがて彼女は亡くなってしまう。キャシーの死を知ったヒースクリフは、自分の命のある限り安らかに眠らせない、亡霊になって彷徨え、どんな姿になっても自分の傍にいろと亡くなった彼女に念じる。

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ヒースクリフの憎悪はとどまる事なく、復讐はヘアトンとキャサリンにまで及ぶ。「嵐が丘」にはヒンドリーとヘアトンもそのまま住んでいたが、ヒンドリーは亡くなりヒースクリフはヘアトンを召使とし、彼には文字さえ教えず教養のない人間に育てた。そして妻イザベラが亡くなると、自分の実の子リントンを引き取った。リントンは病弱でヒースクリフには彼に対する親としての愛情などまるで無かった。


18年の歳月が経過したある日、キャサリンは森の中でヒースクリフとヘアトンに会う。 過去の出来事など全く知らない彼女はリントンが従兄弟だとわかると、友達ができたと喜ぶがヒースクリフは「スラッシュクロス」とエドガーの財産を自分のものにしようと企む。その後ヒースクリフの策により、リントンからのラブレターを受け取ったキャサリンは、病床で余命幾ばくもない父エドガーに内緒で「嵐が丘」に行くが、そこでヒースクリフに監禁されてしまう。 リントンと結婚しなければ、ここから出さないと脅され、父の死に目に会いたかったキャサリンは、病気で短命であるリントンへの同情心もあり、結婚を承諾する。彼女は父親に会う事ができたが、数日後に父エドガーは亡くなる。その後病弱だったリントンも亡くなる。
こうして、ヒースクリフは遂に「スラッシュクロス」とエドガーの財産も自分のものにした。

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ヒースクリフはキャシーの墓を掘り出した。彼女の表情を見て彼の心は静まる。彼は死者を眠らせない。彼の頑なな心も未だ闇の中だ。

住人の居なくなった「スラッシュクロス」は人に貸す事となり、借りにきたロックウッドという青年が「嵐が丘」を訪れる。
嵐の夜にきたこの来訪者はキャサリンの案内された部屋に泊まることになるが、その部屋で20年間もそこにいるキャシーの幽霊を見る。

そんな中、最初は罵り合っていたキャサリンとヘアトンとの距離が縮まり、次第に仲良くなっていく。本来は家の主であるはずのヘアトンは、召使いの扱いを受けてきたにも関わらず、ヒースクリフを父と呼び彼に優しかった。ある日、庭で二人の仲睦まじい姿を目にしたヒースクリフ。彼は、この様子を見て過去の幸せだった自身の姿を重ね合わせたのでしょう。

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ヒースクリフは「もう終わりにする」と言う。彼の心を開放したのは二人の子供達、ヘアトンとキャサリンだった。やがて、ヒースクリフはキャシーの霊に導かれ、彼女がいる「その部屋」で死んだ。 ヒースクリフは、墓の横で、本当に静かに眠っているのだろうか? 村人は言う、彼は今もまだ嵐が丘を彷徨っていると・・。



[あとがき]
ジュリエット・ビノッシュ&レイフ・ファインズが共演した最初の作品です。二人はこの4年後に「イングリッシュ・ペイシェント」で再び共演し、ビノッシュはアカデミー助演女優賞を受賞しますが、この作品のビノッシュも、登場人物の中で唯一輝きを放っていて、とても魅力的。愛憎の表現と陰の人物像を演じるレイフ、この作品でも彼の演技に釘付けになりました。風景映像が美しく、それにのせる音楽も素敵です。

嵐が丘 [DVD]
[監督]
ピーター・コズミンスキー
[出演]
キャシー / キャサリン   ジュリエット・ビノシュ
ヒースクリフ         レイフ・ファインズ
エレン・ディーン(ネリー)  ジャネット・マクティア
エドガー・リントン      サイモン・シェパード
イザベラ・リントン      ソフィー・ワード
ヒンドリー・アーンショー   ジェレミー・ノーサム
ヘアトン・アーンショー    ジェイソン・リディングトン
リントン・ヒースクリフ    ジョナサン・ファース
アーンショー氏        ジョン・ウッドヴァイン
ロックウッド          ポール・ジェフリー
エミリー・ブロンテ      シネイド・オコナー




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こんな日は映画を観よう 嵐が丘 (1939) アメリカ [829]やっぱり愛の不可能性を描いたワイラーの不朽の名作と言うしかない  「ローマの休日」に続いてワイラーの超有名どころを…。はじめて観たのは20代前半?もちろんリバイバル上映だが、E・ブロンテの小説の衝撃が強かったせいか、ひどくもの足りなく感じたことを憶えてる。キャサリンとヒースクリフの狂気とも言える愛憎、復讐心。

2013-04-30(Tue)

アルゴ/命を賭けた最終決断

2012年 アメリカ
2320364950_516c031b10_20130430014222.jpg近代の実話「アメリカ大使館人質事件」を題材にした作品。俳優のベンアフレックが監督、主演。彼は長髪で口髭あご髭を生やし多くの他の出演作品とは異なった風貌で登場する。アカデミー賞を受賞したこと以外、内容を知らず観たので一瞬「この役者誰だろう」と思った。よくありがちな主役の独り舞台となっておらず、彼を含めた6人が一塊の主役のようになっている。

[あらすじ]
1979年11月4日イラン革命が勃発しているテヘラン。過激派の学生たちがアメリカ大使館を占拠し、アメリカに入国した前国王パーレビの身柄引き渡しを求める。大使館員を60人以上を人質に取るが、その中で6人のアメリカ大使館員は裏口から脱出しカナダ大使邸宅に身を隠した。見つかれば自分たちも、拘束された人質の命も、匿ってくれたカナダ大使の命さえ危い。6人は大使館を出る直前に館員の顔写真入りの名簿をシュレッダーにかけたが、現地の子供たちによりパズルのようにつなぎあわせられ、いずれ6人の身元と顔と脱出した事がバレてしまう。捕まれば公開処刑となるだろう。時間の猶予はなかった。CIAは彼らの救出作戦を練っており、事件から69日後、救出実績のあるトニー・メンデスに白羽の矢がたった。様々な作戦の案がでたが、メンデスは偽装の映画製作を既成事実化し、ロケハンで来たカナダ人映画製作クルーであると見せかけ6人を国外に出国させるという作戦を打ち出す。それはとても危険で成功の可能性の低いものであったが他に手段がなかった。
作戦は実行させることが決まった。


  その頃、占領された大使館では名簿の復元途中で
  名簿と人質の数が合わないことがバレていた。
  イランの子供たちはパズルを続ける。 

  カナダ政府の協力により、6人のカナダ人としての
  パスポートと用具一式がテヘランのカナダ大使館に
  届けられた。そして、メンデスは映画製作者の協力のもと
  架空のSF映画『アルゴ』を引っさげてイランに向かう。

  到着したメンデスから作戦の内容を聞いた大使館員
  たちは皆「できる筈がない」と反発する。空港では
  100人もの民兵が鵜の目鷹の目のごとくアメリカ人を
  探している上、6人は映画業界の事など全く知らない
  素人なのである。


それでもメンデスは彼らを説得し承諾させます。6人は自分たちの役を全て暗記し、覚悟を決める。こうして準備は整った。しかし、そんな矢先、突如、政府は作戦の中止命令を下したのです。「もしも映画ごっこで空港で捕まって殺される事になれば世界の笑いものだ」・・・と。そして、メンデスに帰国命令がでる。政府の命令には当然に従う義務がある。彼は6人のパスポートを手に一晩中考えるのです。そして出した結論。「一人で帰国なんか出来ない」 翌日CIAに「責任は自分が負う、作戦は実行する」とだけ伝え、6人と共に空港へ向かった。しかし、この時メンデスと6人は知らなかったのです。一旦中止を決定したため、既に航空券の予約はキャンセルされていた。再び航空券を手配しなければならないが、カーター大統領の承認が必要となる。CIAも再び動き出すが、時間との勝負。空港についたメンデスと6人には、いくつもの難関と危険が待っていた。

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[あとがき]
政府の中止命令に背き自身の判断で作戦を続行させたメンデス。勇気ある決断です。歴史を刻んだ戦争や革命を背景にした真実の物語を映画化したもので、これだけ際疾くスリリングな作品はそうないでしょう。映画としても「面白さ」と「感動」が実感できる作品です。

アルゴブルーレイ&DVD (2枚組)(初回限定版) [Blu-ray]
[監督]
ベン・アフレック
[出演]
トニー・メンデス        ベン・アフレック
ジャック・オドネル       ブライアン・クランストン
レスター・シーゲル      アラン・アーキン
ジョン・チャンバーズ      ジョン・グッドマン
ケネス・D・テイラー       ヴィクター・ガーバー
ボブ・アンダース        テイト・ドノヴァン
コーラ・ライジェク       クレア・デュヴァル
マーク・ライジェク       クリストファー・デナム
ジョー・スタッフォード     スクート・マクネイリー
キャシー・スタッフォード    ケリー・ビシェ
ヘンリー・L・シャッツ      ロリー・コクレーン
ハミルトン・ジョーダン     カイル・チャンドラー
マリノフ             クリス・メッシーナ
ロバート・ペンダー       ジェリコ・イヴァネク
ジョン・ベイツ          タイタス・ウェリヴァー
サイラス・ヴァンス国務長官  ボブ・ガントン
マックス・クレイン        リチャード・カインド
ピーター・ニコルス        リチャード・ディレイン
ジャック・カービー        マイケル・パークス
ロッド               トム・レンク
トム・アハーン          クリストファー・スタンリー
パット・テイラー         ペイジ・レオン
クリスティーン・メンデス    テイラー・シリング

★受賞★
第85回アカデミー賞:作品賞/脚色賞/編集賞
ゴールデングローブ賞:監督賞
英国アカデミー賞:監督賞


[この作品の政治的背景]
歴史を遡る、第二次世界大戦においてイランはソ連とイギリスに占領されていた。戦後もイギリスの影響下の政権が続き、イギリスの石油会社はイランの石油を独占していた。イランの首相モハンマド・モサッデグはイランの石油の国有化に成功したが、石油メジャーにより国際市場から締め出されてしまう。そのためイラン政府は財政難に瀕しモサッデグの支持が失われる。1953年にアメリカ政府とイギリス政府が皇帝派クーデターを画策し、モサッデグは失脚。これにより、先代国王の子であったモハンマド・レザー・パフラヴィー(パーレビ)はアメリカ、イギリスの協力のもと権力を回復し国王となる。パーレビは近代化政策によりそれを支持した欧米諸国(特にアメリカ)と深い関係を続けた。しかしこうした近代化政策は国内のシーア派保守派から強い反発を招き、さらに国費の浪費も非難され、政治への不満も高まりを見せる。国民の間での経済格差が拡大し、国内ではデモやストライキが頻発。バーレビは専用機でエジプトに亡命、各地を転々としたあと癌治療のためという名目で皇后らとアメリカへ入国。イラン学生は入国を許可したアメリカに反発。彼らはアメリカ大使館を占拠し人質をとりパーレビを裁判に掛ける為、その引渡しを求めた。アメリカ政府はイラン政府を懐柔させるため、パーレビを12月5日にアメリカから出国させパナマへ送る。しかしイラン政府はアメリカに対して強硬な態度を取り続けた。カーター大統領は、1980年4月24日から4月25日にかけて人質救出の為、軍事力による人質の奪還を試みたが失敗。これによって事態はさらに長期化するすると思われたが、1980年7月27日にバーレビは亡命先のカイロで、エジプト大統領の保護のもと死去。学生らは大使館の占拠の理由がなくなる。アメリカ政府とイラン政府は水面下で交渉を続けるなか、アメリカの大統領はレーガンにかわり、イランは仲介国と人質返還でアメリカと合意する。そして人質は1981年1月20日に444日ぶりに解放された。

※映画アルゴには実際のモハンマド・レザー・パフラヴィー(パーレビ)のインタビュー映像が使われています。



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小覇王の徒然はてな別館 実録!映画スパイ大作戦! アルゴ -
おはよう、メンデスくん。まずはこの6人の写真を見て欲しい。彼らは先のイランにおけるアメリカ大使館占領事件で密かに脱出しカナダ大使の私邸に匿われている。大使館職員のリストはシュレッダーに掛けて入るが、彼らが復元するのも時間の問題だ。もしも職員の人数が足りないことがイラン革命防衛隊に発覚すれば大使館の人質はもちろん、カナダ大使私邸の6人も公開処刑されてしまうだろう。そこで今回の君の任務だが、彼らのイラン国外への脱出を手引きして欲しい。作戦は偽のSF映画を企画しそのロケハンと称して偽造したパスポートでロケハンクルーに偽装した彼らを堂々と飛行機でスイスへ送り出すのだ。この計画を作られない映画のタイトルに法って「アルゴ作戦」と名付ける。チームリーダーはアンソニー・メンデス、君だ。なお例によって、君、もしくは君のメンバーが捕えられ、或いは殺されても当局は一切関知しないからそのつもりで。成功を祈る。なおこの作戦は成功しても18年間機密扱いされ手柄や名誉はカナダ大使のものとなる。Argo, Fuck yourself!

2013-03-23(Sat)

アレクサンドリア/哲学に身を投じた女性「ヒュパティア」

2009年 スペイン
Ágora西暦4世紀のローマ帝国末期時代。大都市アレクサンドリアが舞台のスペクタクル史劇です。キリスト教徒による異教の排斥が行なわれた時代に実在した一人の女性哲学者ヒュパティアが殉じた生涯を描く。

[あらすじ]
ヒュパティアは世界中で最も学問が栄えていたアレクサンドリア図書館長である数学者テオンの娘として生まれます。彼女は、哲学、科学、数学、天文学、文学等あらゆる教養を修めた人望のある女性でした。彼女がいたこの図書館は当時世界一であり文化のみならず、古代の神々(多神教)を崇め、宗教の象徴とされていた。当時、ヒュパティアの教えは学生達の心を掴み、彼女を慕う学生の一人オレステスは大勢の面前で愛を告白します。また、ヒュパティアのもとにいる奴隷のダウスも、密かに彼女に思いを寄せており、この日「彼女を誰の元にもいかせないで下さい」と神に祈ります。そんなダオスの心配など無用で彼女は研究に生涯をささげるような人物でした。

初期のアレクサンドリアはセラピスとイエスを混合して礼拝し、両者を差別なく崇拝していたのですが、そんな時代は過ぎ、東ローマ帝国皇帝テオドシウス1世は新興キリスト教及びユダヤ教を解禁。次第に一神教を唱えるようになり、アレクサンドリアに混乱が迫ります。そんな頃ダオスは、ふとしたきっかけでキリスト教徒となってしまう。



やがて多神教徒らはキリスト教が自らの宗教の絶対性を民衆に訴える際に、セラピスと其の他の神、すなわち古来の神々を愚弄したとして争いをはじめます。この争いで勝利したのはキリスト教徒。彼らはセラピス神殿と図書館を直ちに放棄することで反逆者を罪に問わないという条件を付けます。ヒュパティアらは出来る限りの書物を持ち図書館を明け渡します。すぐにセラピス神殿は破壊され、多くの図書館の本は焼却。キリスト教徒により世界中の多くの学問の記録と歴史がこの世から抹消されてしまいます。

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本を運ぶ途中のダオス。彼女を慕う気持ちは変わりませんがキリスト教徒であることを話せません。移動の途中、彼はヒュパティアらの元から姿を消しキリスト教徒側の修道兵士と合流します。しかしその後、少し時を経てダオスは彼女の元へ現れます。

状況を知ったヒュパティアはダオスは許し、奴隷の首輪をはずして彼を解放した。彼は立ち去ります。

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年月は流れ、多神教教徒の多くはキリスト教に転じ、彼女のかつての弟子「キユリロス」はキュレネの司教「オレステス」はアレクサンドリアの長官の要職についています。そして彼女も変わらず講義と研究を続けているなかで、今度は残った二つの宗教間、キリスト教徒とユダヤ教徒で対立が起こり、キリスト教はユダヤ教も駆逐。ユダヤ教徒は惨殺されるかアレクサンドリアから出て行くのです。

惨殺したユダヤ人の亡骸を焼却している横でダオスは迷います。「間違いを犯しているのではないか」と。

そんな中、彼女はキリスト教徒に呼び出されます。キリスト教徒らは彼女の科学的理性主義がキリスト教の指導者に精神的な影響を及ぼすと脅威を感じていました。彼女はキリストの洗礼を受けるよう告げられますが彼女は妥協しません。彼女はキリスト教を「古代の神々に比べ公平さも慈悲もない」と非難します。そこで彼女は問われます。信じるものを何も持たない貴方の意見を他者はどう受け入れるのですか?
「私は哲学を信じます」

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初期アレクサンドリアは差別なく信じるものの自由がありました。彼女が信じたのは神ではなく「新プラトン哲学」(ネオプラトニズム)でした。

ある日、テオドシウス1世は演説でキリストが弟子に送った手紙の一説を読み上げます。「女性は謙虚で礼儀正しく静かに従順に学ぶべき・女が教えたり男の上に立つのは許さない」ヒュパティアの行動はキリストの言葉に抵触すると・・・・矛先はヒュパティアへ向けられ、彼女の哲学を異端としました。さらに彼女を「魔女」であると指摘します。オレステスとダオスは顔色を変えます。

オレストスは彼女の身を案じ必死にかばうのですが、これにより自身の身も危険にさらされます。かばい切れなくなり、
彼はヒュパティアにキリスト信仰を受け入れて欲しいと涙ながらに訴えるのですが彼女は改宗を拒みます。

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同じ頃キリスト修道兵士たちによる不穏な動きを知る事になったダオスは、ヒュパティアに身の危険を知らせようとしますが、時既に遅く、
彼女は兵士に捕らえられてしまいます。残忍な殺され方をするよりはとダオスは苦悶の表情で彼女に手をかけます。


[あとがき]
この作品は、サスペンス的要素やロマンス的要素が主ではありませんが、奴隷であるダオスが主人にいくら想いを寄せても適うことがないどころか、想いを言葉にすることすらできない。遣り切れずあんな形でしか愛を表現できないのだという切ないシーンがいくつかあります。ヒュパティアも奴隷を卑下する言動もいくつかあり、ダオスの傷ついた表情と行動が、恋せど叶わずという当時の身分の違いの辛さを描いています。そんな奴隷たちにとって、キリスト教の出現は躍進的であったに違いありません。しかしキリスト教は彼女を敵対視。ヒュパティアの惨殺(西暦415年)ですが、キリスト教徒大司教の指図のもとに行われた可能性があるといわれていて、実際には、キリスト教徒たちは彼女の衣服を剥ぎ取り、生きたまま鋭いかきの殻で体の肉をはがし絶命するまで続けられたという。想像しただけで嗚咽してしまいそうです。苦痛は想像を絶するものであったでしょう。遺体は大衆の面前に晒され、その後死体を寸断され炎で焼かれたという。人権意識など無かった時代の歴史の一齣。現実は残酷です。死んでしまう事が運命だったならせめて映画のように亡くなって欲しかったですね。映画の中の彼女の最期は必要な演出でした。ちなみに、ヒュパティアが地動説とその動き(楕円)(のちにケプラーの法則と言われること)を発見したのは西暦300年代の終わりでしたが、その後このことが証明されたのは西暦1600年代初めにはいってからでした。実に1200年以上も経った後の時代です。もしも彼女が夢半ばで殺されずにすんでいたら、もしも図書館が破壊されてなければ、もしかしたら、現代は今より1200年進んでいた世界になっていたかもしれません。さらに、その後幾度となく繰り返されてきた宗教戦争が、どれだけ回避できたのだろうと思うのです。目に見えぬ神しか信じるものがなかった長い時代、何も責める事ができませんが、人類は宗教という名のもとで犯した愚かな蛮行により、古代の歴史の記録と共に千年に一人のとんでもない逸材をこの世から抹殺してしまったのです。この汚点は人類の教訓として語り継ぎ、宗教だけに留まらず、あらゆる視点から、二度と同じ過ちを繰り返さないことが、遠い昔の僅かな時を生きた一人の哲学者への弔いとなるのではないでしょうか。


アレクサンドリア [DVD]

[監督]
アレハンドロ・アメナーバル
[出演]
ヒュパティア レイチェル・ワイズ
ダオス    マックス・ミンゲラ ヒュパティアに想いを寄せる奴隷  (※監督のアンソニー・ミンゲラの息子)
オレステス  オスカー・アイザック ヒュパティアを愛する弟子。エジプト長官
テオン    マイケル・ロンズデール ヒュパティアの父
キュリロス  サミ・サミール 強硬派のキリスト教徒。後にアレクサンドリア総主教





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映画のブログ 『アレクサンドリア』 トホホな言動の私たち 
こんな映画をよく作れたな。『アレクサンドリア』鑑賞後の嘘偽らざる感想である。映画は、4世紀末、ローマ帝国支配下にあるエジプトの大都市アレクサンドリアが舞台となる。この都市の名は誰もが耳にしたことがあるだろう。世界の七大景観に数えられた大灯台で知られるアレクサンドリアは、地中海貿易の・・・

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ちゃのりん

Author:ちゃのりん
映画から歴史を探るのが好きです。
俳優&映画紹介と、ノンフィクション映画の実在の人物像も探ります。


★好きな俳優★

ジョナサン・リースマイヤーズ

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