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2014-11-25(Tue)

それでも夜は明ける/沈黙と静止のエフェクト


2013年 イギリス/アメリカ 
それでも夜は明ける黒人奴隷を所有することが常識だった19世紀のアメリカ。南と北の貿易体制と経済構造の異なりによる対立や黒人奴隷制度の存続を巡り起きた「南北戦争」。作品の舞台となるのは、この内戦が始まる20年ほど前。当時のアメリカの黒人は、大多数の「奴隷」とごく僅かな「自由黒人」がいた。自由黒人とは、所有者から自由になることを許された、または所有者が亡くなるなどして法律により自由を認められた者で「自由証明書」が発行された。しかし、金の為に自由黒人を誘拐し南部に売り飛ばす白人も存在した。誰の所有物でもない自由黒人は、いわば「歩くドル箱」のようなものである。この物語は自由な身でありながら拉致され、売り飛ばされ、南部で12年もの間、黒人奴隷として生きた男の実話です。

彼の名前は「ソロモンノーサップ」。バイオリニストである。ニューヨーク生まれで、妻と子供に恵まれ幸せな生活を送っていた。ある日、知人からの紹介で仕事の話が入り、彼は紹介された二人の白人と一緒にワシントンに向かった。仕事を終え酒屋でその男たちと酒を酌み交わしていたが、具合が悪くなり部屋に運ばれ横になった。しかし、目覚めるとそこは黒人を売りさばく白人たちの建物内。自身が自由黒人であることを伝えるも彼らは聞く耳を持たない。一緒にいた男の子がいたが、その母親イライザが娘と一緒に迎えに来ると、彼女らまでも拉致し、奴隷としてニューオーリンズへ送ってしまう。

奴隷売買をしている屋敷では何人もの黒人が全裸で立ち、まるで人形のよう。それを品定めする白人。ソロモンはイライザと共にフォードに買われ、彼女の息子は別のところに売られる。親子を可愛そうに思ったフォードは彼女の娘を一緒にと言うけれど売人は娘を売りません。容姿の良い少女は高値だというのです。親子は引き離され、母親の泣き叫ぶ声を掻き消すためにバイオリンを弾かせられるソロモン。


無題
「成長すれば大金を稼ぐ」と。           知恵のあるニガーは面白くない存在       ひどい仕打ちにも負けちゃいません

彼は拉致されたときから「プラット」と名前を変えさせられていました。彼らの最初の仕事は製材所で木を運ぶこと。主人となったフォードは優しい男であったが、彼のところに従事している大工の男ジョンは陰険な性格の持ち主。彼はプラットに対し執拗に嫌がらせをします。一方、明けても暮れても泣き暮らすイライザは、別のところへ売られていきます。

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ジョンの仕返しはプラットを殺すこと。       ジョンの性格を知っている農園の監督官    主人はプラットを売ることを決めます 

ジョンとその仲間に首をつられ、地につま先を着けてやっと立てる体勢のまま、彼を助ける者は誰もいません。フォードは不在。後ろで子供達が遊び、奴隷は黙々と仕事をこなします。現代人から見れば異常な光景。このシーンか意味することを考えましたが、どうしてもわかりません。「他人の所有物には手を出してはいけない」という当時の社会的常識なのでしょうか?。長い時間吊るされ、ようやく帰宅したフォードに助けられたプラットですが、ジョンは、彼を殺すまで諦めないであろうと考え、経済的にも余裕がないこともありプラットを他の農園主に売ることを決めるのでした。


次の農園主のエドウィンは容赦なく奴隷を虐待する男でした。プラットは綿花畑で綿花を摘むようになります。ノルマをこなさなければ鞭打ちです。ここには沢山の綿花を摘む女奴隷パッチがいました。エドウィンは彼女に執着します。しかし、パッチの友人で白人と結婚し奴隷から開放されたハリエットのようにはいきません。エドウィンの屈折した愛と欲望の刃に加え、さらに嫉妬に狂った妻の陰険な仕打ちをまともに受けるのです。求められても地獄、嫌われても地獄。パッチは自分の人生を終わらせて欲しいとプラットに頼みます。無論そんな事プラットにできるはずがありません。

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安息日、かつて奴隷だった黒人女性の家にて。 プラットに異常な嫉妬心を露わにするエドウィン   パッチを殺したいほど憎む妻

ある年、綿花畑には大量の害虫が発生し不作。このような時は主人は手元の奴隷をよそで働かせたりします。エドウィンも何人かの奴隷を判事のところで働かせることになり、プラットも行くことになりました。判事は穏やかな人物で、暫し彼らは平穏な時期を過ごします。バイオリンが弾ける彼はあるとき演奏を頼まれ、給金は自分で貰っていいと言われ、プラットは何年ぶりかで自分のお金を手にしたのです。彼はそれを隠しておきます。プラットは、年月が過ぎようとも、毎日が辛くても 決して家族の元へ帰る事を諦めてはいませんでした。

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やがて、彼らはエドウィンの農場へ戻ります。 エドウィンには黒人の女の子が。パッチの子です。生まれた子が黒人だとからといって、流石に自分の子まで奴隷にするほどの鬼畜ではなかったようですが、パッチの白目は殴打によるものか真っ赤に充血しています。これが、嫉妬に狂う奥様の仕業なのか、もしくは、歪んだ性格のエドウィンの仕業によるものなのか明確にされていません。彼女への虐待は終わりがないのでしょうか。

それでも夜は明ける

奴隷の中には新顔がいました。かつて監督官だったという白人男、その男から奴隷を鞭打つ心境を聞いたプラットは、望みを彼に託し、バイオリンで稼いだ金を渡し、手紙を送ってほしいと頼み込むのです。しかし、見事に裏切られます。文字を書けることをずっと隠していたためプラットは事を切り抜けることが出来ましたが・・・。

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彼女への仕打ちに、心が砕け散ったプラットは、家族の名前を掘り込んだ自分のバイオリンも砕いてしまいます。

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そのころ屋敷に大工仕事に来ていたカナダ人バスと、僅かな時間だが話をする機会があった。彼が奴隷制度撤廃を唱える男である事を知っていたプラットだったが、以前の裏切りの記憶から、自分の身の上を話すのが怖かった。それでも、彼を信じて、再び望みを託すのです。
「ソロモンノーサップ」に戻り、そして「家族と再会」するために。 


[あとがき]
黒人奴隷の実話でありアカデミー賞作品賞を受賞した作品であることだけは知っていましたが、出演者をチェックしていなかったので、視聴しながら、大物俳優の助演・端役に驚かされました。特にブラッド・ピットは登場からキーマンであることは予想しましたが、出演時間にしてはごく僅か。何故かと思ったら、メインは製作のほうだったんですね。出演してなければ気づかないところでしたが、宣伝を意図したものだったのでしょうか?。俳優人のなかでは、愛・憎・欲が入り混じった心理表現が複雑で難しい役、エドウィン・エップスを演じた「マイケル・ファスベンダー」の演技が凄いです。(「シンドラーのリスト」でレイフファインズが演じたアーモン・ゲートと被りました。)視聴者を怒りと悲しみで本気にさせます。また、「ルピタニョンゴ」もまだ、女優としてはキャリアが浅いのですが、役柄もあり胸に突き刺さる演技をしてくれます。そして最も良かったのは、製作手法です。この作品で、今までにない特徴というか、一番印象的なのは「沈黙」と「静止」の使い方。音やざわつきというものは急に停止すると、逆に注意を引かれてしまうもので、この作品は、その沈黙・静止のあとの次の「音」が入るまでの「時間」のとり方が絶妙。無意識に惹きつけられます。それと、カメラが撮る様々な「物」までも、登場人物の心理を強く印象付ける役割を果しています。どの画像も無駄がありません。ドラマ構成もしっかりしており、過去に起きたことと、現在を同時進行させる為の、シーンを廻す順番と配分が綺麗に纏まっていると思います。物語に描かれている差別による虐待は視聴的にきついものでした。黒人は家畜とされ、苛め抜かれ、鞭打ちされ、精神を責められ、さらに、黒人女性は、男性であれば受けずに済む、もうひとつの苦痛まで描かれ、とにかく激しい描写をしています。 しかし、忘れてはいけないのは、このようなことは現実に無数にあったはずだということ。アメリカの暗闇の時代の記録として、とっくに誰もが知っていることですが、一人の人間の物語として見事に実写化されたことで、その苦痛を身近に感じて、作品の持つ意味を深く考えさせられます。本作を見終えて考えたことは、差別は人種だけではなく、これからも形を変えて生まれる可能性があるということ。あらゆる差別は、人間の心を狂気に変えて、他人の痛みなど感じなくなる危険を孕んでいるということ。そして差別は、テロ、革命、戦争にも繋がってきたということ。だからこそ、過去から学ばなくてはならないし、過ちを直視し、目を背けてはならないのだということ。 そういった意味から、このような作品は倫理的に非常に意義のあるものだと思うのです。 

それでも夜は明ける コレクターズ・エディション(初回限定生産)アウターケース付き [DVD]

[監督]
スティーヴ・マックイーン
[出演]
ソロモン・ノーサップ/プラット - キウェテル・イジョフォー
パッツィー ルピタ・ニョンゴ
ウィリアム・フォード(最初の主人) ベネディクト・カンバーバッチ
エドウィン・エップス(次の主人)マイケル・ファスベンダー
メアリー・エップス(エドウィンの妻)サラ・ポールソン
サミュエル・バスブラッド・ピット
アンナ・ノーサップ(ソロモンの妻)ケルシー・スコット
マーガレット・ノーサップ(ソロモンの娘/子役)  クヮヴェンジャネ・ウォレス
ジョン・ティビッツ(フォード邸の大工)ポール・ダノ
セオフィラス・フリーマンポール・ジアマッティ
ハリエット・ショー夫人アルフレ・ウッダード
ヴィリエレ保安官ジェイ・ヒューグリー
アブラム叔父様ドワイト・ヘンリー
ロバートマイケル・K・ウィリアムズ





書籍/ソロモン・ノーサップ (著)
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ベネディクト・カンバーバッチ/マイケル・ファスベンダー/ポール・ジアマッティ/ポール・ダノ/クヮヴェンジャネ・ウォレス/ブラッド・ピット
[受賞]
・第86回アカデミー賞(作品賞・脚色賞・助演女優賞/ルピタ・ニョンゴ)
・第71回ゴールデングローブ賞(作品賞) 他




★外部関連記事★

・シネマ・トゥデイ/それでも夜は明ける
奴隷制度がはびこっていたアメリカを舞台に、自由の身でありながら拉致され、南部の綿花農園で12年間も奴隷生活を強いられた黒人男性の実話を映画化した伝記ドラマ。主人公が体験した壮絶な奴隷生活の行方、そして絶望に打ち勝つ希望を描き出す。監督は『SHAME -シェイム-』のスティーヴ・マックィーン、黒人男性を『2012』などのキウェテル・イジョフォーが演じる。


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