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2014-03-27(Thu)

アルバート氏の人生/不器用な主人公の幸せのビジョン

2011年 アイルランド
アルバート氏の人生この映画は、30年程前にグレン・クローズが舞台で演じ、それ以降、本人が、何度も映画製作を試みてきたという、彼女の思い入れの強い作品です。文芸映画的なものと予測していましたが、それだけではなく、予想外なところで可笑しかったり、驚かされたりと、ありきたりではないところが良かったように思います。物語の舞台となっている19世紀のアイルランドは、飢饉貧困時代。上流階級以外の人々は生きていくのが精一杯。そんな中で、特異な生き方をした、一人の女性と、彼女を取り巻く、登場人物達のそれぞれの生き様と心理が丁寧に描かれています。

主人公のアルバートは貴族の子であり私生児だった。親類と共に母からの援助を受けて成長していたが、母がなくなると、その援助を受けることができなくなり、スラム街で生活していた。やがてその保護者も亡くし、たった14歳でひとりになってしまう。そんな中、無情にも男達に身を傷つけられるという暗い過去があった。当時のアイルランドは、成人男性でさえ仕事に付くことが困難だったため、国外に渡航ができる者は仕事を求めて国を次々出て行くという現象が起きていた。そんな状況で、たった14歳の身寄りのない少女を雇うところなどあるわけもない。そんな彼女が生きるために選択した道は「男性になること」だった。男になる事で、仕事を得、男になることで身を守り、そして長年女性である事を誰にも知られず、給仕人(ウェイター)として生きてきた。こんな秘密を持っている彼女は、人と距離を離さざる得ない寂しい人生を送ってきた。彼女のたった一つの楽しみは、毎日コツコツと貯めたお金を手帳に記録すること。務めているホテルの自分の部屋の床下にお金を隠し、将来自分の店を持つことを毎日夢見て過ごしていた。そんな彼女にある日、ホテルの女主人から、塗装の仕事に来ていた、ペンキ職人の男を部屋に泊めるようにと言われる。断りきれないアルバートは仕方なく・・。

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案の定、ペンキ職人の男ペイジにバレてしまう。 あまりにも心配するアルバートに・・・      !?なにかの冗談ですかぁぁーーー!

ペイジは同性愛者で結婚していたことを知る。これがきっかけでアルバートは「パートナー」というもうひとつの希望を持つようになります。
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この日ホテルで仮装パーティ。2組の貴族夫婦客、彼らはそれぞれに同性愛者で、男装&女装で参加。(ワンピ姿のジョナにビックリ)

アルバートはペイジのような生活を自分も手に入れられるかもしれないと夢を膨らませます。そして一緒に働いているメイドの可愛いヘレンを誘いますが、彼女はクズな男ジョーと交際中。ジョーはヘレンをアルバートと付き合わせ、最終的にはお金を貢がせようと企むのです。

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他力本願のジョーの夢はアメリカ         ヘレンの気持ちを置き去りにアルバートの妄想は一人歩き 初夜?ッテナニスルツモリ!!

やがてヘレンはジョーとの子を孕んでしまいます。ジョーは子供の面倒を見ると言いつつもその態度はヘレンの心を傷つけます。その頃、国中でチフスが流行り、ホテルでもメイドが一人死に、アルバートも感染した。その後、幸運にも回復したアルバートは、ペイジが結婚するときに、自分が女であることを、いつ、どのように打ち明けたのかを聞こうと彼の家を訪ねた。しかしペイジは妻をチフスで亡くし失意の底にいた。そんなペイジにアルバートは自分と一緒に暮らさないかと提案する。あまりの唐突さにペイジは、アルバートの心理を感じとったのか、パートナーが欲しければ自分で探すことだ。と言い、アルバートに、自分の妻が作った女性の服を着せ、二人で海辺を散歩した。アルバートは女性用の服装で楽しそうに走ります。彼女は同性愛者なのではなく、ただの男装した女性だと感じるシーンです。不器用なアルバートは ペイジと同じ方法、「結婚」と言う形でパートナーを得ることを考えたのですが、彼女が本当に求めたのは、「家族」だったのではないでしょうか。女性であることを隠していたアルバートにとっては、同性の友人すらいなかったのだから。ヘレンは妹のような、娘のような、そんな感覚だったのでは?。恋愛感情そのものを知らないアルバートは、へレンがジョーと付き合っているのを知っていても、嫉妬の感情などなく、ヘレンを心配するだけでした。また、ヘレンにプロポーズしているのに、妻を亡くしたペイジに一緒に住もうと言ったりと、アルバート自身が、「好意を抱く」のと「恋愛感情」との区別がつかない(気づかない)という、純粋でもあり、欠落ともとれる複雑な感情を表現しているように思えました。
一方、何度かのデートをした上、結婚まで申し込みながらも、手も握らないアルバートを理解できないヘレンは・・。

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キレまくるヘレンの怒りのチュゥ!          ヘレンの不安に一撃のセリフ。        泣き崩れる。

やがて、ヘレンの不安は的中する。ジョーはヘレンに自分は父親になれないと告げ、二人は別れます。同時にアルバートもなんとも「あっけなく」亡くなってしまうのです。責任放棄の男はアメリカへ。アルバートが女性だったという事実は世間を騒がせた。アルバートが貯めていた大金をこっそりと盗んだホテルの女主人は、ペイジを呼びホテルの塗装を依頼した。アルバートの部屋に泊まることになったペイジは、彼女の母の写真を見つける。その写真を眺めながら、孤独な人生を送らなければならなかった、アルバートの描いた夢を思う。ふと窓の外を見ると、洗濯物の隙間から赤ん坊を抱いたヘレンの姿が。他に行き場のないヘレンが、我が子と一緒にいるためには、女夫人から、ただ働きの条件を突きつけられても、それを呑むしか生きていく方法がなかった。それを知ったペイジが彼女に告げた言葉は・・。
アルバートが描いた幸せのビジョンはペイジによって引き継がれていく・・・。

ヘレンはアルバートが女性だったことに、さぞ驚いたことでしょう。この後、彼女には二度目の驚きが待っています。文芸的な作品なのに、 そうではない、アンバランスなシーンを想像をしてしまうことと、この先に思い浮かぶ親子の幸せの情景が、悲しい感情を和らげます。 

この作品のキャストですが、なかなか面白いです。ペイジ役は当初、本当の男優と思っていたのですが、ビックリ、あの1992年に公開の映画 『嵐が丘』で女中役で出ていたジャネット・マクティアでした。ちなみに『嵐が丘』はイギリスのブロンテ兄弟のエミリーが執筆した小説で、その姉妹のシャーロットがとてもロマンティックな恋愛小説「ジェーン・エア」を執筆しこれも何度も映画化されているのですが、一番最近映画化されたのが、この「アルバート氏の人生」と同時期に公開されていて、今回のヘレン役のワシコスカが、主役のジェーン・エアを演じています。こちらも良い作品に仕上がっていて、かなりお勧め。そしてもう一人、注目を浴びているのがジョー役のアーロン君。『アンナ・カレーニナ』でその美形ぶりが話題になりました。そして私が好きなジョナサンは・・ちょびっとの役でした。どうせ女装するなら徹底的にやって欲しかった・・www・・(でも目立っちゃダメなのね、脇役なので)。ちなみにジョナサンが、この作品の前年まで主演した『チューダーズ <ヘンリー8世 背徳の王冠>』の時に、彼の王妃役として共演していたマリア・ドイル・ケネディがジョナサンと続けて共演で登場していたのにも驚きました。彼女が出演する作品は、自国のTVドラマぐらいで知名度の低い女優さんですが、今回はメイド役として、かなりの出番がありました。そして、主役のグレン・クローズですが、彼女はこの作品で、製作/主演/共同脚色/主題歌の作詞の4役をこなし、アカデミー賞で、主演女優/助演女優/メイクアップ/の3部門でノミネートされるという功績を残しました。過去30年間の間に、何度か製作を試みて頓挫している作品だったそうですが、個人的には女フェロモンが抜けてしまっている(笑)今の年齢になってからのアルバートで正解だったと感じました。

アルバート氏の人生 [DVD]


[監督]
ロドリゴ・ガルシア

[出演]
アルバート・ノッブス     グレン・クローズ
ヘレン・ドーズ        ミア・ワシコウスカ
ジョー・マッキンス     アーロン・ジョンソン
ヒューバート・ペイジ    ジャネット・マクティア
ホロラン医師        ブレンダン・グリーソン
ベイカー夫人        ポーリン・コリンズ
ポリー            ブレンダ・フリッカー
ヤレル子爵         ジョナサン・リース=マイヤーズ
メアリー           マリア・ドイル・ケネディ
キャスリーン・ペイジ    ブロナー・ギャラガー



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マンガソムリエ煉獄編/アルバート氏の人生
この、主人公自身もコントロールできない、既に描いてしまった幸福像への妄執ってやつは、わりと普遍的な物語なのかもしれない。だれだって、ずっと思い描いてきた幸福ってのはあって。それを実現するために四苦八苦しながら生きていくわけだけど。生きていく間にやっぱり、それとは全然違った形の幸福ってのが提示される時はある。でも、その時にすぐにそっちにハンドルを切れるかっていうと、なかなかそうはいかない。それは、思い描いてしまった幸福像という呪縛だ。


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